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暗殺教室(杉神):夜の喫茶店

セラニポージの『夜の喫茶店』歌詞一部引用。本誌バレ、アンハッピーエンド注意。でもコメディのつもりで書いてます。

凸と凹がなんか噛み合ってない
エラー続きのキャッチボールは息切れ寸前

最初は、二人とも笑顔だったんだ。
待ち合わせ時間にオレが一分遅刻したけど。言い訳させてもらえば、昨日楽しみすぎて明け方まで眠れなかったんだよ。やっと眠くなってきたのが朝四時くらいで、目が覚めたら九時半、待ち合わせ30分前。慌てて着替えてトーストかっこんで家を出た。ろくに鏡を見ることもしなかった。
ハチ公前で待ち合わせて、神崎さんは開口一番、しとやかに微笑って言った。
「寝癖がついてる」
その時は、そんな失敗もささやかな笑いの種だったんだ、それなのに。

オレはコーヒーを、神崎さんはミルクティーを30分も前に飲み終わっている。白いカップの底にへばり付いた澱はカッピカピに乾いて今のオレらを取り巻く空気のようだ。  

思うに、オレらの空気が悪くなり始めたのはあのクソみたいな恋愛映画のせいだ。カップルで観るなら今一番人気の恋愛映画しかないだろうと、安易に考えたのが悪かった。ヒロインは男に頼りっきりの依存体質だし、男の方はラリだったし、オマケに濡れ場はべちゃべちゃと冗長で変にイヤらしい。一人だったらウヒョーとか鼻の下も伸ばしたかもしれないけど、隣に付き合い始め二週間の彼女がいる時にそんなもん見せられたら気まずくて気まずくて。ちゃんとR指定出しとけよ、何であんなのが人気なんだ。

沈黙を誤魔化すため…そしてなぜかやたらと喉が渇くためさっきから水ばっかり飲んでいる。「ここの水レモンが利いてるね、ちょっと塩素臭もするけど」「うん、そうね…」そんな会話をしたのも、そしてそれで終わってしまったのもいつのことだったろう?オレはもう、クエン酸とClの薫る水のせいで水中毒になりそうだ。これはアレだ、水ジャンキーだ。…。ああダメだ、ちっとも気が利いてない。気が利かないと言えばこのBGM!何だよさっきから『アゲ↑アゲ↑ラブ☆ラブ☆』って!人気らしいのは知ってるけど明らかに合わねーだろこの喫茶店に。ほら、角の席に座ってるマダム集団だってすっげー微妙な顔してるし…。

「水どうぞ…いや、紅茶の方がいいか?」
ギャルソン衣装に身を包んだクラス委員の磯貝が、ついに空になってしまったグラスに水を注ぎにきた。
ちょっと前に磯貝のバイトが生徒会長の浅野にバレて騒ぎになったが、よりによってこの喫茶店が、磯貝が働いてる喫茶店だったとは。しかも今日がシフトだったとは…。
他人の様子に機敏に動く磯貝のことだ、オレたちの空気にも確実に気づいているだろう。というか、囁くような声の調子が、言葉が、眼差しが、明らかに気遣いにかかっている。オレは言う、
「良いよ気を使わなくて」
「…そうか。…悪い」
磯貝は静かに二人のグラスに水を注ぐと、暗殺訓練で身に付けたサイレントな動きで店の奥に引っ込んでいった。

…無意識だったけどなんだあの乱暴な態度は!たまによくいる店員には横柄になるヤな男みたいじゃねーか!!神崎さん、嫌な気持ちになったろうな…オレに失望したかもしれない。
いやそれより磯貝にも申し訳無さ過ぎだろ!明日クラスでどう接すりゃいいんだよ!!

ああ、ダメだ。何かしようと、何か変えようとする度にどんどん雰囲気が悪くなっていく。



二人して何にも言えないまま、レシートだけがひらひらとはためいている。
私たちの座っている席はちょうど、冷房の前だから。寒い。乾いて冷たい空気は、今の私たちの雰囲気に良く似てる。
さっきから、何度も夏用カーディガンをかきあわせてみるけれど、オシャレに特化したレースのそれは、ちっとも役に立たない。
私は小さく、何度目かも解らないため息をつく。

最初は、二人とも笑顔だったの。彼が一分遅れてきたけど、そんなのは。でも、彼の寝癖がついた髪の毛とか、口元にちょっとついたパン屑とか、お父さんの…とは云わないけど、サイズが合ってないサンダルとか目に入った瞬間、心の奥の奥底、ほんの少し、ちくりと針みたいなのが刺した気がする。
久しぶりにお化粧するから、思い切って新しいコスメ買って、今朝は一時間くらい鏡の前にいたのに。
そんな感情を振り払って、笑ってみせたら、杉野くんはいつもの明るい笑顔をしたから、それでも良いかなと思えてきて、手をつないで映画館に向かったの。
映画館にはいくつか新作がやっていて、杉野くんだったらシリーズ6作めのハリウッド・アクションか、有名漫画の実写映画を選ぶかなと思ってたんだけど、杉野くんは所謂「今夏、一番泣ける恋愛映画」のポスターを指差した。今思えばアレ、私に気を使ってくれたのかなあ。実は私、そんなにこの手の映画観ないんだけど、ちょっとだけ興味もあったし、断る理由はなかったからそれにした。
感想は…うーん…
これで泣ける人がいるのは否定しないけど、私は好きじゃないかも。
私にとってはそれ以上それ以下でもなかったんだけど、杉野くんが気まずがっちゃって。ちょっと大人っぽ過ぎるシーンもあったし、ってのは解るんだけど、あんまり謝ったり恥ずかしがったりするものだから、なんだかこっちまで気まずくなっちゃった。

沈黙を誤魔化すために、私は水ばかり飲んでいる。グラスに口を付けながら彼を盗み見ると、彼もおんなじようにグラスに口を付けている。動きだけならこんなに、こんなにシンクロしてる、のにね。
「あー…メジャー行った田代、全治一年だって」
杉野くんは唐突に、思い出したみたいに言う。
「そうなの。心配だね」
田代選手の顔もそんなによく解らないけど、私は言える精一杯を返す。
「…」
…もしかして、冷たく聞こえたのかな?彼はまた喋らなくなってしまった。
だって、私野球はルールもよく知らないもの。それは、恋人の杉野君が好きでプロも目指してるスポーツだもの、覚えようとは努力してるわよ?でもわからないものはわからないの。
暗殺のこととか、受験のこととか、そんな些細なことで良いの、他に何か無いのかな。

…私、とっても嫌な女だ。自分は悪くないって?悪いのは彼、だって?
杉野君もそういうの見抜いてるから、気まずくなってるのかもしれない…

磯貝くんがお水を注ぎに来てくれた。ここ、磯貝くんがバイトしてるお店だったんだね。磯貝くんにも、気を遣わせちゃったな…

話題を思い付いてるなら、私から話せばいいだけのことよ。ほら、また大きな暗殺計画の話が持ち上がってるじゃない。杉野君は何をやるつもりなの、とか話題に出来ることは沢山ある。よし。

私は思い切って口を開く。
「「あの…」」

彼が、
   彼女が、
      同時に喋ろうとする
俺たち、
   私たち、
      こんなにシンクロしてるのに

手振りで相手に「お先にどうぞ」と合図を送る
でもやっぱり二人とも何も喋れない

有りがちな夜の喫茶店、どこにでもある喫茶店の窓際、恋の尻尾が逃げていく。
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暗殺教室(イト狭):みかんと友愛数

綺羅々ちゃんとどうにか仲良くなりたい不器用なイトナ君のお話。ぎこちなラブ。吉原のオマケもあるよ。漫画:冷蔵庫の中に象(杉山小弥花)を少し引用。あと、二人のみかんの食べ方と、成績について勝手に捏造注意。異論は認めます…因みにここで言う媚薬とかなんとかは、恋のお呪いと同義です。言葉の意味そのものみたいな大それた意味合いはないんじゃよー。




詩と数学が目指す真は、一つの比翼の鳥である


今回の数学の模試では、やたらと公倍数、公約数についての問題が出てきた。イトナにとって数学は得意な科目だから、何が出ても殆ど困ることなどないのだが。
「友愛数っていってね」
模試の内容でそれを思い出したのか、昼休みにカルマが所属する四班の仲間たちに話していた。
「2つの自然数の組で、自分自身を除いた約数の和が、互いにもう片方と同じになるような数があるんだって。ピタゴラスの時代には発見されてたらしいよ。一番小さいのは220と284」
イトナは、コンビニのごはんのばらけやすいおにぎりをかじりながら何となく彼の話を訊いていた。しかし、次にカルマが言った言葉でより集中して耳を傾ける。
「アラビアでは二つの果物に友愛数を書いて、媚薬として好きな人にあげたんだってさ。」
「…」
イトナは手元に残った昼食を見下ろす。机の上には、安かったのでつい買ってしまった半分緑の温州みかんがちょうど二つ。育ち盛りの中三男子であるし、そのくらい難なく食べられるが、イトナはそれを再び布巾に包んだ。

全てのテストが終わり、クラスメートたちは全員帰る。二週間後に迫った期末テストに備えたり、暗殺の計画を立てたりするのだろう。
イトナは校庭に生えている大きな木の枝に器用に座って、ラジコンのヘリコプターを飛ばしていた。
音も静かで、リモコンに送られる映像も随分鮮明になった。問題は攻撃力だ。今回の糸成号も対先生弾を飛ばす銃がついているが、相変わらず威力は弱い。(実際にはやらないけど)イタチの首くらいは飛ばせるとは思うが、殺せんせーを狙うにはまだまだ甘い。期末テストが終わったら大掛かりな暗殺を仕掛けるのだと磯貝は言う。それまでに、役に立つようなものが作れるか…

イトナは軽く息をついて、ヘリコプターを回収する。もう帰ろうかと思ったその時、猫のように軽い、砂を踏む足音がした。そこには、同じ班の狭間綺羅々が一人でふらりふらりと歩いていた。
彼女は自分と同じ、俗に言われる『寺坂グループ』の一員ではあるが、二人とも寺坂、村松、吉田のように四六時中一緒にいる訳ではない。
イトナはカバンに戻したみかんの存在と、カルマの言葉を思い出した。

『アラビアでは二つの果物に友愛数を書いて、媚薬として好きな人にあげたんだってさ。』

本当かな…

普段イトナはそんな呪いなんて非科学的なものを信じる質ではないが、今日は何となく試してみたくなったのだ。
カバンからみかんを取り出して、いつも持ち歩いているドライバーを皮に軽く突き立てる。そのまま尖った先端を走らせ、片方には220、もう片方には284と刻み込んだ。皮を傷つけられたみかんは、清冽で鮮やかな、柑橘特有の香りを辺りに撒き散らした。
それから、それなりに高さのある自分の居る枝から、スクールバッグを落とした。
ドサッ。
予想より重い音を立ててスクールバッグは地面に激突する。
…確か、割れたり壊れたりするものは入ってない、筈。
しかし、それで狙い通り綺羅々はこちらに気が付いた。歩く方向を変えてイトナの居る木に近づき、枝の上を見上げた。
「あら」
「よう」
偶然を装って右手など挙げてみせる。そんなイトナに綺羅々は言った。
「またラジコン使って覗き?」
イトナは綺羅々にぶつからないように枝から飛び降りる。
「人聞きの悪いことを言うな。動作確認してただけだ」
それから、持っていたみかんの一つを綺羅々に渡す。
「それ、やるよ」
「…何よこれ」
傷つけられた故にやたらと香り立つ、温いみかんに綺羅々は眉根を寄せる。
「何って、温州みかんだ。品種なら多分青島温しゅ…」
せっかく説明してあげたのに、綺羅々は面倒臭そうに手を振ってそれを遮った。
「見りゃ解るわよそれくらい。てか何でこんなに傷ついてんの、2、8…4?何これ」
みかんを手の中で回して表面を観察しながら綺羅々は呟いた。イトナは咄嗟に考えついた嘘を言う。まさか、媚薬だなんだ言う訳にはいかない。
「えーと、数学が出来るようにする呪い、みたいな」
綺羅々は模試の出来を思い出してか、嫌そうな顔をした。
「嫌みか」

…不味いことを言ってしまったか、そういうつもりじゃなかったのに。

次に何を言おうか迷っていると、予想外なことに綺羅々はその場に腰を下ろしてみかんの皮を剥き始めた。
「それでも食うんだ」
イトナが思わず呟くと、綺羅々はイトナをちょっとだけ睨むようにして言った。
「みかんにこんなことして、傷むじゃない。もう良い年なんだから食べ物で遊ばない」
…そういう科白がさらっと出るあたり、やっぱり女なんだな。
イトナは妙なところに感心してしまう。イトナも綺羅々の隣に胡座をかいて座り、自分のみかんを剥く。外皮を剥いたら、白い筋を爪の先で摘まんで綺麗に取り除いていく。…ふと綺羅々を見ると、筋が付いたままの房を口に運んでいる。
「白いの付いたままで食べれるんだな」
「一々煩いよ。あんたこそ男の癖に何ちまちま剥いてるのよ」
…細かい作業が好きなもので。それに、栄養学的にどうのと言われても、口当たりが悪いのは俺は嫌だし。
相変わらずみかんをツルツルに掃除しながら、イトナはみかんを咀嚼する綺羅々を眺めていた。綺羅々はみかんを飲み込むと、顔をしかめた。
「酸っぱい…」
イトナも、まだ心残りはあるものの急いで房を一つ外して、口に入れてみる。
別段美味しいというわけでもないが、口内に広がるのは確かな甘味。
「こっちは甘いぞ?…替えるか」
「良いよ、あんた甘いの好きなんでしょ?」
転校初日のイトナの昼食風景を思い出してか、綺羅々は言った。
…流石に素面であんなに大量の菓子類を食べたりはしないのだが。
「いや、それ程でも…嫌いでもないが」
そう言ってイトナは問答無用で綺羅々のみかんを取り上げ、自分のみかんを代わりに渡した。

盛るのなら、それを隠す食べ物は甘い方がいい。

「んな散々触りまくったみかん人にあげるなって…」
綺羅々は文句を言いつつも食べ始めた。そして呟く、
「ホントに甘い」
イトナは黙々とみかんを食べる綺羅々の横顔をじっと見ている。
「さっきから何なのよ」
イトナの熱ーい視線に気づいて、綺羅々は迷惑そうに言った。
「いや…」
イトナは慌てて目線をみかんに戻す、振りをしてまたこっそり横目で綺羅々を観察する。
綺羅々の横顔は当然というか、相変わらず青白くどこか冷やかで、いつもと何も変わらなかった。

まあ、最初からわかってたさ。呪いは呪いだ。

イトナは少しだけ残念そうに微笑んで、綺羅々のものだったみかんの一房を口に含んだ。

「…こっちにも数字が書いてあるのね。220?」
食べ終わったらしい綺羅々が、皮に刻まれた数字に気づいて訊いてきた。
「そう」
イトナは頷いた。
「あんたは数学得意なんだから出来るようにするおまじないなんて必要ないじゃない」
綺羅々は言った。イトナは少し考えて、返す。
「俺は現代文と社会が出来るようにする呪いだ。互いの知識を分け合おうみたいな」
綺羅々は笑った。
「ガキみたいなこと考えるね。…まああんた、現代文はともかく社会苦手だもんね。工場再建して跡継ぐなら技術よりそっちの方が大事なのに」
「本当にな」
でも、覚えられないものは覚えられないんだから仕方がない。他の科目はほぼ皆に追いつけたと思うが、社会…特に政治経済が本当に解らない。今日の模試でもやっぱり政経のコーナーは白紙だらけだ。こんなことでこれからどうしよう、とは思うのに。
イトナの、いつもは鉄壁に保っている無表情に、明らかな翳りが差したのを見て、綺羅々は少し驚き、気まずそうに顔を顰め、それから考えた。
「今度の期末…一番苦手な科目で学年一番取ったら触手二本だってね」
「殺せんせーそう言ってたな」
綺羅々は言う。
「あんたに教えてあげる、政経。まあ、私も凄く得意って訳じゃないし、あんまり難しいところは磯貝とかに訊いた方がいいと思うけど」
イトナは驚いて綺羅々を見る。柄にもないことを言っている自覚があるのか、綺羅々はイトナと目線を合わせず、頬は僅かに赤みが差していた。
「…良いのか?」
思いがけなさすぎる展開を信じられず、イトナは綺羅々をじっと見つめ、確認するように訊いた。綺羅々はそのまっすぐな視線にちょっとたじろぎながらも頷いた。
「その代り、数学は私に教えなさいよ。あ、あと物理も」
「…わかった」
イトナはこくりと小さく頷いた。
「さて」
綺羅々は立ち上がった。そして、校舎を指さした。
「今日の模試の復習でもしてく?」
「記憶が新しいうちにやったほうが良いらしいからな」
イトナも立ち上がる。みかんの皮は布巾に包んでスクールバックに入れた。
「あんた専門的でマイナーなところばっかり突き詰めそうだよね」
「気を付ける」
そんな他愛ない話を、他の友達も居ない1対1でも当たり前のようにしながら、イトナと綺羅々は校舎へと戻っていく。

本当に、効いた。やった。

友愛数を刻んだみかんの皮の入っている、肩にかけたカバンを見下ろす。
イトナは心なしか笑みを浮かべて、いつもより若干軽い足取りで綺羅々の後に付いていった。

over

オマケ【予想外に流行っていた】

寿美鈴、220・284とチョコレートで書かれた二枚のクッキーを入れたセロハン袋を持っている。

綺羅々「あれ、原も(数学を出来るようにする)お呪いしてんの?」
寿美鈴「…!!!え、あ、うん…きららちゃん、誰にも言わないでっ///」
綺羅々「…?まあ、言わないけど」
イトナ(バレませんように…)

暗殺教室101話感想

はーい、エキサイト感想ですよー。

先週のイトナ君の所在に関する仮説の答え合わせですが、四番(コマ外に居た)でしたー!!良かったあああ!もー、心配させよってからにこの子はー(←おかん?)。
そしてもう一つ、喜ばしいことが。
イトナ君が喋ったあああ!
ええ、やっとなんですの奥さん。
87、8話で仲間になって以来、体育祭にラジコン制作に大活躍だったにも係わらず、頑なにパントマイム貫いてきた彼がですよ。一言ですがついに…。いやー、メイン回じゃないときにセリフ貰えると、E組の仲間感が増しますねー。
でも最近ちょっと作画崩れ気味じゃない?と思うのだ。描きにくいビジュアルしてるのは承知ですが、出番は少ないのだから可愛く描いてあげて下さい、松井先生。個人的に好みは、顔立ちは88話で髪型は94話。
今回出てきた糸成3号は、ヘリコプターの形をしていました。いいんじゃないかしら。ラジコンに偵察をさせるなら、常々空を飛ばせた方がいいと思ってたので。視野は広く取れますし、対象にも見つかりにくいです。しかしカッコいいなあ。メカ全般に魅力を感じない私でもおおっ!てなったもん。こんなの作っちゃうイトナ君改めて素敵。こんなデザインできる松井先生マジ尊敬。

イトナ君は確かに大好きですが、某サイトのイトナバージョンになるつもりはありませんので(差別化)、本編の感想自体も軽く行きます。

早速死神に楯突く道を選んだE組ですが、大丈夫?ビッチ先生は拘束されて気絶して動けないので、死神はいつでも彼女を殺すことが出来るのですが…。
岡島くん、素晴らしい演技力ですっかり汚名返上です。撮るより出る方が向いてるのでは?いや、何にとは言わんが…。
愛美ちゃんと竹ちゃんも相変わらず地味カッコいい。技術者が揃っているE組、ホントに世界征服でも出来そうだ。
死神の『万を超える技術を思い出そう』て、へんてこな言い回しだと思いました。というのも私、死神のこれまでのやり口や殺せんせーを狙う理由が、どおも小物臭いな~と思っておりまして…今死神を名乗っている彼は、本物の死神の弟子とかではないのかなと。いや、別に彼が本当に本物の死神でも良いんですけどね。
次週どうなるか、やっぱり楽しみです。

暗殺教室:生き残りたい転校生×2

箸休めみたいな。お久し振りのギャグ会話文。いつもながら本誌バレ、キャラ崩壊注意。そしてメタ注意。

イトナ:「今本誌では死神とか出てきてE組大ピンチな訳だが」

律:「ええ」

イトナ:「それについては律はどう思う?」

律:「どう、とは?」

イトナ:「暗殺教室がこれから先も『殺伐だけどほのぼのライフ』路線を貫くのか、デビルマンも真っ青な破壊と絶望の物語に変貌を遂げるのか、それは松井優征(かみ)のみぞ知るところではあるが、仮に後者でE組側に死人が出るとしたら真っ先に殺されるのは俺たちじゃないかと思ってな」

律:「た、確かに…私は人外ですし、堀部さんには身寄りがないし」

イトナ:「そこで今日は、そんな俺たちが生きて最終回を迎えられる術を模索しようと思う。まず自分の強みと弱みを把握してみよう。」

律:「私の強みは…色んな形のものが作れるとか、学習能力とか、あざとさとか色々ありますが」

イトナ:「自覚してるんだあざとさ」

律:「いざ殺されるというか、破壊される時にそれらが役に立つ可能性は3パーセントくらいでしょう。寧ろ弱みの方が大きい 」

イトナ:「動けないものな」

律:「マルウェア…じゃない、モバイル律を拡散することで皆様と行動を共にすることも出来ますが、それはこの本体有っての事ですし」

イトナ:「鵜守沌夕の『同窓会の時間二時間目』では本体が無くなってもモバイル律だけ残ってなかったか?」

律:「そんなのはしがない二次創作家の妄想ですし。」

イトナ:「因みに『同窓会シリーズ』は忘れている訳ではないらしい。下らないネタではあるが色々思い付いてしまってそれを消費するのに右往左往しているのと、本誌でビッチ先生がどうなるか見極めてから続きを書きたいのでお待たせしているという事らしい。以上ステマでした」

律:「話題を戻しますと、このように教室の床に固定されている状態では私の生存率は著しく低いままなのです。ですから堀部さん、早い所私を自律思考『自走』砲台に改造するのです。」

イトナ:「…考えとく(500kg…)」

律:「では堀部さんの強みと弱みに迫ってみましょう」

イトナ:「俺の強み…電子工作が多少出来るくらいしか思い浮かばないが」

律:「あと好みが別れそうなビミョーでゼツミョーな可愛さとか」

イトナ:「…律?」

律:「冗談です。触手時代に植え付けられた高い身体能力が残ってるみたいな描写があったじゃないですか」

イトナ:「(AIでも冗談とか言うのか…)でも二週間後に岡島と木村があっさり再現してたからな。理事長に感心までさせていたのに、結局あれは何だったのか」

律:「11巻のオマケで説明が為されれば良いですね。」

イトナ:「そして弱みだが」

律:「私が(+鵜守が)思うに、堀部さん意外と仲間想いなのではないですか?」

イトナ:「…そんな描写あったか?」

律:「なかったけど、状況的に考えてです。堀部さんは一度文字通り全てを失い、悪の道に堕ちた。そしてE組に救われた。良くない言い方をすればE組に借りがある状態です。意志は強そうだし、一度コレと決めた大切な人たちの為には何だってするタイプではありませんか?特に行方不明のご両親が亡くなっていたなんて展開になったら自棄になってE組を救うために自分の命を投げ打ってしまいやしないかと鵜守さんは心配で心配で昼しか眠れなi」

イトナ:「堀部さん巨乳マニアまで読んだ。まあ、ドリームするのも程々に」

律:「ここまで考えてみましたが…結局、私たちの強み弱みは関係なくて、松井先生(かみ)の一存でどうにでもなってしまうような気がしてきました。」

イトナ:「…となると、却って望みが見えてきたぞ」

律:「?」

イトナ:「松井先生(かみ)はテコ入れはしないと言いつつ、ファン人気を受けてか最近は千速、木桃を同じコマに描くよう心掛けている(と思う)。だったら三次元の人たちが『幸せになって欲しいキャラNo.1』とでもファンレターに書いてくれれば、俺たちが生き延びられる可能性が高くなるのではないか?」

律:「笹塚刑事…Xi…(ぽそり)」

イトナ:「何か言ったか?」

律:「滅相もない」

イトナ:「兎に角俺たちが願うのは、これからメディア化が進む暗殺教室の繁栄と」

律:「何故か途中から裏方になってしまって影の薄い私たち転校生組を忘れないで頂けたらなということです。」

イトナ律:「応援、宜しくお願いしまーす」


勝手に宣伝失礼&お粗末!

クッキーちゃんハピバー


16歳の誕生日おめでとうー!!(27日)
人間で言えば傘寿ですね。無芸大食だし、無愛想だし、年とともにビジュアル、中身共々とみにタヌキ化が進んでいるキミですが、ダックスの平均寿命を過ぎ、多少足腰が不自由なのと胸にでかい脂肪腫ぶら下げてるのと心臓が少し弱ってるの以外、概ね健康なのに、我々飼い主は感謝すべきことだと思うの。キミがこうして日々元気にゴロゴロしてくれてるお陰で、私もとーさん、かーさんも心置きなく外に働きに出られるのだ。ありがとう。世の中にはどうにも病気がちで目が離せない子もいるというのに(それが飼い主不孝という訳じゃ毛頭ないんだけども)。そんなに健康管理してあげている訳でもないアホな飼い主共ですが、いつも頑張ってくれてありがとう。ウチの中は、一時期よりは落ち着いたとはいえまだまだ不安定なことだらけだ。家族の隙間をすっぽり埋めてくれるキミが、会話の繋ぎになってくれるキミが、まだまだウチには必要です。おもちゃだろうがベッドだろうが買ってあげるし、ウンコシッコヨダレ(稀にならリバース)の始末くらいならしてやるから、どうかいつまでも健康で、長生きしてください。

Happy birthday cookie!!

(え、祝うなら美味しいものくれって?今朝ピーチあげたじゃない)

暗殺教室(吉原):真夏のエチュード

今日は明るくさわやかに。長たらしいくせに特に山は無し、ひたすら吉原のドライブデート。下ネタも多分なし。イト狭要素少しあり。
バイクわかりません…よって、真のバイク好きはそんなの興味示さねーとか、そういう意見は受け付けませぬ。二人乗りするのにちょうど良いと聞いたからそれを引用しただけさ。バイクなんて運転したことも、二人乗りしたこともナイヨ。

 大学に受かって、初めての夏休み。俺はバイトした金でずっと欲しかったハーレーダビッドソンを買った。それをスミレに多少自慢気に電話して話したら、是非乗せて!と可愛いおねだりが飛んできた。
 …乗せてやらない理由がない。と言うか、そのために買った。とりあえず、今度の日曜日は空いてるかどうか確認して、デートの予約を取り付ける。愛してるよ、で電話を締めくくって、携帯をピッと切ったら、小さくガッツポーズをした。

 日曜日。約束の10時ちょうどに、スミレの住んでいるマンションの駐車場で、クラクションを三回鳴らす。スミレの居る302号室のドアを、じーっと見ていると…十何秒かして、パタンと扉が開いた。
「ごめん、待った?」
 三階から、スミレが俺を見下ろして言った。俺は返す。
「全然、今来たところ!ゆっくり来いよ」
「はーい!」
 ゆっくりで良いと言ったのに、パタパタと全速力で階段を駆け下りる音がする。…鍵締めたのか?
 駐車場に現れたスミレは、短めの白いチュニックにジーパン、スニーカーとラフで有りながらそれでも可愛い格好だった。鮮やかなピンクのリュックを背負っている。スミレはリュックを指差して言う。
「お弁当作ってきたんだ」
 息を切らしてにっこり笑う彼女に、俺も自然と笑顔になる。…何が楽しみって、スミレの弁当だよ。村松の料理もプロ目指してるだけあって旨いが、スミレの料理には適わない。彼女が作ってくれたという事実が最高の調味料になる。
「さて、今日はどちらに行きやしょう、お姫様」
 手を差し出しておどけて言えば、スミレはクスクス笑って俺の手を取る。
「久し振りに海が見たいな。」
 海か、夏休みだからどこもかしこも子ども達とかで煩いが、俺はとっておきの場所を知っている。椚浜海岸なら、規制が厳しいこともあって人が少なく静かな筈だ。
「おやすいご用!」
スミレを後部座席によっこらせと乗せて(スミレが「ごめん、私重いでしょ」と恥ずかしそうに言った、でも俺は力仕事慣れてるし、女の子一人持ち上げるくらいは屁でもないのだ)水色のヘルメットを渡す。俺も色違いの赤いヘルメットを被り、エンジンを入れる。アクセルを踏めば、ハーレーダビッドソンは滑らかに走り出した。
「しっかり掴まってろよ!!」
 俺はそう言ってアクセルをさらにぐっと踏み込んだ。俺の腰に回されたスミレの腕に、ぎゅっと力が籠もる。控え目な力と、柔らかな体温に笑みがこぼれた。マンションやコンビニ、立ち並ぶ家々がみるみる内に後ろへと流れていく。
「バイトどうよ!」
 俺は音に負けないように大声で訊く。スミレも大声で返してくれる。
「慣れたよ!おばさんパートさんが厳しいけど!!」
 スミレは少し前から、デパート内のパン屋でアルバイトをしている。声に、暗い陰は感じない。俺も何やかやと忙しいため、未だに食べに行ってやれていないが、それなりに楽しく仕事をしているのだろう。安心した。
「いじめられたら言えよ!すぐに仕返ししてやるから!!」
 俺が言うと、スミレはクスクスと苦笑いした。
「気持ちは嬉しいけど」
 何だよー、割と本気だぜ?
 空は力強いコバルト色に輝いている。照りつける太陽。生命力そのものみたいな入道雲。熱い風を切り裂いて走れば、街は少し埃っぽい、夏の匂いがした。

 バイパスに乗って、前をよたよた走る若葉マークの軽に文句垂れながらも暫く走ると、左手に海が見えてきた。潮風が頬に当たる。快晴の空の色をそのまま映して、宝石みたいに煌めく海に、スミレが歓声を挙げる。
「綺麗だけどやっぱ人多そうだな」
 俺は言う。海には、遠目でも泳ぎに来てる奴らがちまちまと沢山いるのがわかった。砂浜にはカラフルなビーチパラソルが立ち並び、紺色の水平線にも三角形したヨットの帆が並んでいる。二人きりで静かにって訳にもいかねえか。しかしスミレは朗らかに言う。
「良いの!ああ、水着持ってくれば良かった!!」
 …。そりゃ、すげー惜しいことをした。
「じゃ、じゃあ次の日曜また来よーぜ、今度は泳ぎに」
我ながら下心丸出しな、と呆れながらそれでも申し出てみる。俺のそんな内心は最早お見通しらしくて、スミレは笑う。
「そうね、思いっきり可愛いの買っちゃうかな。楽しみにしてて」

 椚浜海岸も今年はなんだか、人が多かった。それでも先ほどバイパスから眺めた場所よりは随分静かで、俺は駐車場にバイクを留めた。スミレが降りるのを手伝って、二人して砂浜に歩いて降りていく。
 白い砂の上には、昼顔がのんびりとツルを伸ばして、ピンクの花をいくつも咲かせていた。鮮やかな潮の香り。サファイアみたいに輝く水面。隣には、笑顔のスミレ。正直、なんて幸せなんだ。

「あれ、吉田じゃね?!」
 …素っ頓狂な若い男の声がした。ウンザリする程知りすぎてる声の一つだ。もしかして。
 嫌な予感に限って的中するもので、俺たちから数メートルくらいの場所に、むさ苦しい野郎三人組がええ年こいて、一番ガタイのでかい奴を埋める砂遊びに興じていた。
「げ、腐れ縁…」
 説明するまでもないだろう、中学からつるんでいたアノ仲間たちだ。
「久し振りに会ったのにげ、とはなんだ、げ、とは」
 中学時代に比べてまあまあ背は伸びたとは言え、やっぱり一番小柄なイトナが言う。
「用事があるってこのことかよ」
 最初に声を掛けてきた村松が言う。
「このクソ暑いのに余計熱いなぁ」
 砂に埋められている寺坂がニヤニヤ笑いながら言う。そりゃ暑いだろーよお前はよ。まず砂から出ろ。

「なんでお前らがここに居るんだよ…」
 ため息とともに恨めしさ全開で仲間たちの顔を睨んでやる。スミレは思いがけない再会に嬉しそうだが、俺は嬉しくない。
「コイツの傷心を癒してやりにさ。狭間に振られたって」
 村松がイトナを親指で指さして面白そうに笑う。
「振られてない、断られただけだ。俺と会うより嶽本野ばらの新刊が良いらしい」
 イトナは相変わらずの無表情でぼそぼそ言うが、眉間に僅かに皺が寄っている。五年も付き合いがあれば、微妙な表情の違いにも気づけるようになるってもんだ。
「…それで何で海なんだよ…」
 別にイ○ンのフードコートで駄弁るでも良いじゃねえか。全くよりによって。
「コイツの好きな巨乳でも作ってやろーと思ってさ」
また村松が言う。
「少しは心の慰めになるかと思ったら、面が寺坂じゃこの様だ」
イトナが心底つまらなさそうに言った。寺坂が「うるせえよバカ!」と怒っている。
 そういやよく見れば胸に武骨な山が二つ盛り上がってるな。俺はまた孕んだトドかと思ったんだが、…寧ろ何故心のいやしになると思ったんだ。
「あぁ、ねぇ、ちょっと早いけどお昼にしない?お弁当持ってきたんだけど、多分二人じゃ全然食べれないと思うの」
 野郎どもの間に漂う不穏な空気を察してか、スミレがリュックを肩から外して笑顔で言う。寺坂が砂の山から飛び出した。
「おお、マジで?良いの?」
 良くない。
「原がどれだけ腕を上げたか審査してやる」
 村松が羽織っていた七分袖のシャツの腕をまくりながら言う。
 余計な世話だ。
「俺割り箸持ってる」
 イトナがどこからか三本おて○とを取り出した。
 何でだよ。
 俺がますますげんなりするのに構わず、可愛らしいく○モンのシート等が敷かれ、俄かにピクニックの用意が出来上がる。
 スミレが五段くらいの大きな重箱を取り出した。そしてシートの上に鮮やかな手つきでパッパッと広げる。
「おお~…」
 野郎どもから感嘆の声が上がる。それはちょっと、誇らしい。
 重箱の中身はそれはもう、色とりどりだった。
 まず一番上が、ふりかけやわかめで細工を凝らしたカラフルなおにぎりと、花寿司だった。二番目が肉料理と玉子料理。チューリップ唐揚げとか玉子焼きとか定番のモノから、角煮やテリーヌといった手の込んだものも入っている。三番目が魚料理で、鮭のパン粉焼きやタラのムニエルなどが並んでいる。四番目は野菜類、いんげんの胡麻和えや人参のシリシリが目にも鮮やかだ。五番目は、りんごやオレンジやアメリカンチェリーやキウイやらが、お洒落に飾り切りされて小奇麗に詰められていた。
「…吉田が肥えるわけだ」
 イトナが呟いた。
「お、俺そんなに太った?」
 ちょっとショックだったので、スミレに小声で訊いてみるが、スミレはニコニコ笑って首を横に振る。
「そんなことないよー」
 そうだよな、確かに食うけどそれ以上動いてるもの。全くこのチビは昔っから失礼だ。
「いっただっきまーす…」
真昼の海岸に、のんきな声が響いた。

「やっぱうめえなぁ~!!」
寺坂が幸せそのものといった表情で言う。
「そうかぁ?テリーヌはもっと滑らかな方が上品だぜ、生クリームとかブランデーとか利かせてよ」
村松は箸を止めずに食べ続けながらけちをつける。スミレがちょっとだけ声を荒げて反論した。
「田舎風だからこれで良いのよ!」
「そうそう、文句があるなら食うな」
俺も、もちろんスミレに加勢した。
「イトナ、お前どっちが好きだよ」
村松が黙々・淡々と主に肉料理の段を食べ続けるイトナに訊く。イトナは俺たちを上目遣いの目線だけ向けてみて、口の中のモノを飲み込んでから言おうとする。
「俺はどっちも…」
俺はイトナを思いっきり睨み付けてやる。するとイトナは目線を下に落とし、言い換えた。
「いや、女子が作ったって点で原さんのが上回る、かな」
「てめーもう何も作ってやらねーぞ!!」
今度は村松がイトナを指さして怒る番だった。
この無機質な朴念仁にしちゃいい答えだ。
「彼方を立てれば此方が立たず…大変だな、おめーも」
寺坂が同情したようにイトナの肩に手を置く。
「まあ…」
イトナは相変わらず黙々と、今度は野菜料理制覇を狙いながら呟いた。

「それで、昨日になって断られちゃったのね?」
食べること大好きな奴らが5人も揃えば、スミレが早起きして4時間くらいも掛けて作ったウルトラ豪華な重箱弁当もものの15分で空っぽになってしまう。正直俺は食い足りなかった。寺坂もそうなのか、持ってきていた炭酸飲料で腹の空きをごまかしている。そして今は、静かに寄せる波の音を聞きながら、スミレはイトナの恋愛相談?に乗っていた。
「アイツが気儘なのは今に始まったことじゃないから。」
イトナはこんなの何でもないとでもいうような態度をとっていたが、普段見開いている大きな目を少しだけ伏せていた。よっぽどがっかりしたらしい。珍しい。
「うーん…」
スミレが暫く考え込んだ。
「イトナ君、きららちゃんに合わせてあげたことって、ある?」
「…合わせる、とは?」
「きららちゃんの好きな小説を読んで話題にしてあげるとかさ。」
イトナは(多分)困ったような顔をした。
「…俺活字は専門書とか論文とか以外受け付けないんだ」
「そういって文庫本手に取ったこともねえだろ」
仰向けになって寝っ転がっていた村松が口を挟んだ。
「あはは…」
スミレは苦笑してから、また口を開いた。
「でもねえイトナ君、きららちゃんがイトナ君が得意な機械工学とかの話についていこうとするより、イトナ君がきららちゃんの趣味に合わせてあげた方がまだ楽なのよ。歩み寄るって、大切なことだと思うの」
「…」
イトナは考え込んでいるようだった。俺も少し、自分たちの経験から助言してやる。
「スミレな、時々バイクの雑誌とか読んでるんだよ、俺のために。女の子だから、あんまりそーゆーの興味ないだろうに」
スミレが顔を真っ赤にして首をぶんぶん横に振って「そんなのじゃないから!意外に面白いし」と否定している。
可愛い。
「お前も、食わず嫌いしてねーで読んでみたら?世界が広がるかもしれねーぞ?」
「どーしても無理だったら、努力はしたんだぞってなことで狭間の見えるところに栞を挟んだ文庫本をこれ見よがしに置いておくというのもアリなんじゃねーか?」
500mlコーラのペットボトルを飲み乾した寺坂も会話に加わってきた。てか、お前デブるぞ。
「そんなものか…」
i納得したのか、イトナは遠い浪間を往くカモメを眺めながら呟いた。

暫くして、寺坂はバイト、村松は店の手伝いがあるとかで帰って行った。イトナは何の用事もないようだったが、「なら研究室にでも顔出そうかな」(プレゼミ生とかいうらしい、勉強嫌いと言っていた癖に好きなことに関しては熱心なものだ)と言って原チャリ飛ばして去って行った。途中で本屋にも寄らないと、とぶつぶつ言っていた。

…やっと静かになった。
ふと見ると、スミレがアイツらが好き勝手食べていった重箱をまとめて片付けている。俺は慌ててくま○ンのシートの砂やゴミを掃うのを始めた。
「さて、これからどーするべ」
ピクニックの後を、『来た時よりも美しく』し終えた俺は、スミレに訊いてみる。小さなヤドカリがちょこちょこと、彼にとっては果てしない砂浜を行軍(い)くのを眺めていたスミレが顔を上げて、微笑んだ。
「そうね…午後は大成君にお任せしようかしら。」
それもまた、お安い御用だ。
「夜まで空いてたっけ?良い景色のとこ見つけたんだ」

それから俺たちは、海沿いの道路をハーレーで飛ばし、途中見つけた甘味処やフランス人形博物館なんかで時間を潰した。
甘味処は、餡蜜の有名な店だったらしくて俺もスミレも大満足だった。特にスミレがニコニコ微笑みながらスプーンに乗せて差し出してくれた寒天の一切れはこの世の物とも思えないほど絶品だった。
人形博物館は…スミレはそれなりに楽しんでたみたいだが、俺はちょっと…。あの焦点の合ってない色の薄い瞳が、なんとも不安にさせるんだよな。スミレは言った。
「きららちゃんこーいうのとか好きそうよね」
同感。後でイトナに教えてやろう。

そして風は涼しさを帯び、ヒグラシが鳴きだしてだんだんと日は暮れる。
空が深い青紫に沈んだ頃、俺はスミレを連れて『とっておきの場所・本日パート2』に向かった。

そこは小高い丘の上にある公園で、近くは椚が丘市全体、遠くの方には東京都のビル街までが一望できる。暖かなレモン色の灯りで満たされた夜の街を見て、スミレは息を吐く。
「わぁ、きれい…」
「だろ?大学のサークル仲間に教えてもらったんだぜ」
俺は自慢げにニヤッと笑う。チャラい野郎だが、デート情報の提供者という点ではかなり頼もしい奴だ。
「…大学、楽しい?」
スミレが俺を見上げて訊いてくる。
「?結構な」
俺は答えた。急に、どうしたんだろう?何かヤなことでもあったのかな?
俺の思ったことは顔に出ていたらしく、何も言っていないのにスミレは首を横に振った。
「違うのよ。ただ、みんな変わってくんだなあって思ったら、ちょっと寂しくなっちゃって…」
「…」
スミレは続けた。
「殺せんせーを殺せて、私たちはこうして生きてて。昔はE組にいたときより楽しくなるなんてないと思ってたのに、大成君といるときとかもっとずっと楽しくて。でもE組で仲良かった子で今は連絡取れない子もいるし、これから私たちはどんな大人になるんだろう…あ、なんか全然取り留めなくて訳わかんないよね、ゴメン」
…確かに一貫していないように聞こえるが、大体言いたいことはわかった。つまり、これは…スミレは…

今俺と居て楽しいのに、これからそれが変わっちゃったらどうしようってことだろうか。そう思っていいんだろうか。

そう思い当ったら嬉しくてたまらなくなって、思わずスミレを抱き寄せてキスをした。

「…びっくりしたぁ」
スミレはしかし、嬉しそうに頬を染めていた。俺は言う。
「…これは予約」
「?」
「まだ俺、学生だし、どんな仕事に就くか…まあ実家のバイク屋だろうけど、確定はしてないし経済的にも全然自立してないけど」
「…」
「学校卒業して、独り立ちして、スミレが俺のことまだ好きだったら、」
俺は気持ちを落ち着けるために目を閉じて深呼吸した、そして一気に言葉に出す。
「そうしたら、俺のお嫁さんになって下さい。本気です。」
顔が熱い。胸の奥で心臓がドキバクと煩い。肋骨突き破って飛び出すんじゃないかと思うくらいに。
スミレの顔をちらりと見ると、呆気に取られた顔をしていた。それはそうだろう、いきなりこんな、唐突なプロポーズなんてされたって。
でもバシッと断られたら凹むなあ、なんて情けないこと考えていたら、スミレがくすくすと笑いだした。
「…」
俺も気まずそうに苦笑いしてスミレの顔を見つめる。一頻り笑ったら、スミレは言った。
「大成君、いつも唐突なんだから。…でも、もし卒業して、大成君がまだ私のこと好きだったら」
スミレは俺の真似か、目を閉じてすぅっと深呼吸した。
「こんな私でよければ、ぜひお嫁さんにしてください。本気です。」

そう言って笑う君は、本当に可愛くて素敵で、

俺はもう一度、スミレを抱きしめてキスをした。

その時、大きな破裂音が辺り中に響いた。何事かと思って空を見上げると、色とりどりの花火が夜空中を埋め尽くしていた。
「おお、綺麗だなぁ」
良い大人になっても、やっぱり花火は好きだ。テンションが上がる。スミレもそれは同じらしく、花開くような笑顔で花火を見ている。
「今日お祭りだったんだね」

俺は、スミレの手にそっと、指で触れる。スミレはすぐに察して、俺の手を握り返した。

ずっと、君とこうしていられますように。

俺は目を閉じて願った。

over

ちこっと小ネタと渚誕祝いと自分を見つめる孤独な毎日

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ホントに、彼はどこにいるんだろう?

渚くんはぴばー!野郎の癖にぴょこぴょこツインテールな君が大好きだ!可愛いのに暗殺の才能があって、男にも幼女にもモテモテな君が大好きだ!いつも柔和で胸の奥に何か隠してる様子がなんとなく薄ら寒い(誤解無きよう、それも彼の魅力だ)とこも大好きだ!最新号本誌じゃなんだか死神に安心できるとか思っちゃってるけど、私は君が正しい未来を選んでくれることを切に願う!少年誌の主人公として。

 三万円かけた面接講習がおわたー。先生の評価は概ね高かったが、やっぱり想定外質問が来るとしどろもどろになってしまう…あと、私ってプライド高そうなベシャリしてんのか…
 私は常々頭のいい子ちゃんになりたがっている訳だけど、「あんたバカね」と言われるより、性格のことを突っ込まれる方がショックだったらしい。まあ、「バカ」は言われ慣れてるもんな。
 やる気は相変わらず出ないけどやっぱり怖えよー。あと一日半しかないんだ…でも、やれることをやるのだ。
 たったの20分じゃないか!!シャンとせい!!

君よどこにいる(暗殺教室100ちこっと感想)

 消さなきゃいけない落書きに限って巧く描ける不思議。

 記念すべき100話だとゆーに、全くもって通常運転だったのに僅かばかりガッカリ。百という数字を囲んでパーチーするE組の扉絵でもあるかなーと期待してたけど…忙しいもの、仕方ないか。
 ロブロさん生きてて何よりw甘っちょい、死神(笑)という意見も見られるようだけど、烏間に連絡させるためにあえて致命傷には致らないようにしたとか、ロブロさんも死神の攻撃を受けて生きていられるくらいの達人だったとか、解釈はいくらでも出来るので私は別に気にならない。
 ビッチ先生生きてたー!!でも拘束されてもう3日かぁ、確実に危ない…
そして、死神はビッチ先生誘拐してE組に何の授業をしようとしているのだろう。怖い…
 気になるのは、またもや居ないイトナくん。彼は何してるんだろう…如何に4つの仮説をば。

①教室の外で裏工作中→だとしたら死神に気付かれて報復されたりしないか心配だ。
②風邪でお休み→季節の変わり目なんだから身体大事に…。
③まさかの裏切り!死神の仲間してる→うわ、読むの止めちゃうかも。まあ有り得ないとは思うけど…。
④コマ外にいる→それが一番安心!でも一週間に一コマくらいは顔見ないとお姉さん寂しいんだぜ!あとそろそろ何か喋ってくれ。

 殺せんせーのお声が解禁!ああ、こーゆー声だったのか、とすげーしっくりきました!!え、コレ福山潤さん?四月一日と同じ…マジで?!声優ミラクル。

暗殺教室(イト→狭):花の名を知らない

『吉原』もさり気にあるから遊んでいってくんなましー!!(←メジャーカプ名に頼るな)あんまりシモいのばかり書いてると嫌われちゃうから、今日は綺麗なお話。E組生ではない、皆様の知らない男の人と結婚する綺羅々ちゃんと、彼女を送る実は綺羅々ちゃんが好きだったイトナくんのお話どす。本誌バレに捏造注意。
結婚式行ったこと無す。おかしな点が有ってもご容赦下さい。


202×年、6月15日。ずっと降り続いていた雨が奇跡的に上がって、その日は一日晴れていた。雨が空気の汚れをきれいさっぱり洗い流したのか、何とも瑞々しく澄み切った青空だった。
車から降りて、空を見上げたイトナは思う、
良い日だ、と。

式場には、もう随分多くの人が集まっていた。その中には知った顔もちらほら見受けられる。

寺坂とか村松とか、吉田とかが居れば安心なんだが、と、中学校以来一番仲が良かったメンバーの顔を人混みの中きょろきょろと探しながら、イトナは受け付けに向かう。そしてパイプ椅子に座るややふくよかな女性に気づいた。

吉田寿美鈴。吉田大成の妻である。イトナにとっても元クラスメートだ。

「あ、イトナくん久し振り。」
寿美鈴はイトナの視線に気が付いて、彼より早く自分から声をかける。イトナは軽く会釈して、鞄から水引のついた封筒を取り出す。
「ご祝儀」
寿美鈴は封筒を表、裏と見て確認するとにっこり笑った。
「ありがとう。…少し髪の毛切った?」
「夏だからな。変か?」
会って直ぐに髪を切ったことに気づかれるのは、似合ってないからだという話を思い出して、イトナは無意識的に髪を触りながら訊く。寿美鈴は首を横に振った。
「全然、似合うよ。大成くんも切ったんだよ、床屋さん行くの面倒くさいなんて言うから、私が。あの人の毛質、難しいのよ…」
そう言ってうふふと笑う、寿美鈴はすっかり奥さんの顔だ。

相変わらず、仲が良いらしい。それは良いことだ。とても、良いことだ。

「大成くんなら向こうの席に居るから。寺坂くんたちも一緒だよ」
寿美鈴が指差した方向には、確かに見慣れた三人が固まって座っていた。イトナは思わず息を吐く。安心したのだ。
「ありがとう」
そう言って、イトナは彼らが居る席へと向かった。

「ようイトナ」
寺坂がいち早く気付いて手を挙げる。村松が席を少し詰める。イトナは手を挙げ返してそこに座った。
「忙しいっつってたのに悪いな。」
吉田が何故か謝った。イトナは首をゆっくりと横に振る。
「友達の結婚式だ、当然だろ」
村松が、しばらくイトナの横顔を様子を窺うように見ていたが、イトナがその視線に気付いたのをきっかけに、口を開いた。
「…大丈夫か?」
「何が」
村松は声を潜め、イトナの耳元で早口に言う。
「狭間のことだよ。好きだったんだろ?」
イトナは一瞬、目を大きく瞠る。
なんで、知ってるんだコイツ。
しかし、すぐにいつものポーカーフェイスを繕った。
「…心配されなくても、俺は祝うつもりでここに来ている。」
すっ呆けることも出来たが、あまり意味のないことはしたくない。イトナはさらりと答えた。
「…」
村松は、それでも心配そうにイトナを見ている。村松は昔から、割と世話焼きだ。イトナも口に出したことはないが、本当はそれに感謝していた。
「村松が気に病むことは何もない。俺は、『五人』でいる方が、もっと好きだったんだ」
「…そうか」
真っ直ぐ前を見つめるイトナの透明な眼差しに、村松はもう何も言わなかった。
「そういや今日って、お前が初めてE組に来た日だろ?」
イトナと村松の会話に気付いていなかったらしい寺坂が、後ろから口を挟む。
「…そうだっけ」

あんまり、覚えてない。触手を付けていた頃全般がそうなんだけれど。改造人間として過ごした期間は、実はそれ程長くはなかったが、あの頃は恨みとか妄執とかに支配されて、ずっと朦朧としていたから。

「そうそう、お前初登場いきなり壁ぶっ壊して、『俺は壁より強いことが証明された』って。」
「あん時ゃビックリしたけど、今思い出すと笑えるなあ」
吉田と寺坂が楽しそうに笑う。からかってはいるのだろうが、そこに不快な悪意は感じない。イトナも少し笑う。
「そんなこともした気がする」
「あんなに衝撃的だったのにお前本人は『気がする』かよ、なんか寂しいなぁ」
村松も会話に加わってきた。
「9月以降のことははっきり覚えてるぞ」
触手が取れて、正式にE組の仲間になった後のことは。あの半年間は、人生の中で一番鮮やかな日々だったから。モノクロの記憶が、そこから総天然色になったみたいな。

「コードネーム付けて訓練やったよな」
「へちまって書いたのお前だってな、アレ何でだよ」
「何となく?まさかゲロまずラーメンとか書くわけにも行かなかっただろ」
「もうゲロじゃねえよっ!!」
「体育祭、お前凄かったよな」
「結局E組の大体が出来るようになったじゃないか、凄くなんてない」
「ガイジン部隊に吹っ飛ばされた俺たちを忘れて貰っちゃ困るぜ」
「受け身っつったって痛かったんだから」
「俺、あの松方さんの入れ歯ベル、今でも有り得ないと思ってるんだが…」
「何でだよ!面白ぇじゃん入れ歯ベル」
「俺もないわーと思ってた…考えたの吉田だったのか」
「まじかよ絶不評」

…こんな風に、みんなで集まれば、次から次へと話したいことは浮かんで尽きない。十年経っても、それは変わらない。

他にも色々、本当に色々あった。苦しいことも、悲しいことも、全部全部。

でも、こいつらが居る限りどんなことだってかけがえのない思い出だ。だからこそ。

イトナは思う。

俺が居て、一番楽しかった五人組(この形)を、崩したくはなかった。いつまでもそんな関係が続けばいいと思った。だから、俺はこの結婚を祝うべきだ。

「新郎新婦の入場です…」
司会の声が響く。結婚行進曲に合わせて、違う入口から父親に連れられた花嫁と、花婿が入ってきた。
狭間綺羅々。彼ら五人組、通称・寺坂グループの紅一点で意外と姉御肌だった彼女は、今は見たこともないほど美しく化粧して、純白のドレスを纏い、イトナが会ったことのなかった(しかし非常に優しそうな)男性の隣に立っていた。

…白いドレス、似合うじゃないか。

イトナは思う。ウェディングドレスなんて、アイツが一番嫌いそうな衣装の一つだったのに。

いつからだったろう。狭間を気づいたら目で追うようになっていたのは。
いつからだったろう。ミス肝試し日本代表を自称する彼女を、とても綺麗だと思うようになっていたのは。
…言い出せなかった、怖かったから。関係が変わってしまうこと、どう転んでも友達には戻れなくなってしまうことが。
だから、隠し通そうとした。飲み会でもした時にぽろっと零してしまったか、何故か村松には知られていたが…。
どちらにしろ、中学生のままで居られないなら、申し込めばよかったんだろうか?そうしたら、もしかしたら…。

そこまで考えて、イトナは首を横に振る。

有り得ない。旦那さん、話には聞いていたけど良い人そうじゃないか。あの狭間が「面白い人」だと説明するくらいだから、意外と一筋縄ではいかない人かもしれないが…

神父さんの言葉が終り、誓いのキス。花嫁と、花婿の姿が重なる。歓声が上がる。

吉田と寿美鈴さんみたいに、互いに望んだ結婚は良いことだ。とても、良いことだ。

「ブーケトスですって!」
「絶対取るんだからっ!!」
華やかなドレスにハイヒールなんて格好でよくも、と思うくらいに来客の独身の女性たちがどたどた走って外に出る。
「おー、やーるねぇ」
吉田が少々顔を引き攣らせながら言う。隣で寿美鈴もくすくす笑う。
「綺羅々ちゃん、綺麗だったわねぇ」
のんびりと、そんな話をしながら綺羅々の友人五人はこのホテル自慢の薔薇がいっぱいの庭園に出る。
空はやっぱり、どこまでも青く澄み渡っていた。

花嫁のドレスと同じくらい真っ白で、ゴミ一つ落ちていない道の真ん中で、花嫁と花婿は立っていた。
「ブーケトス、行きまーす!3、2、1」
司会が調子こいた声で張り上げる。

しかし、花嫁は、綺羅々は投げなかった。彼女は気づいたのだ、参列者に紛れる旧友たちの姿に。
そして、一人の青年の、透明な眼差しに。

綺羅々は花婿から離れて、旧友たちの元に歩いていく。そして、イトナの前で立ち止まると、クラスで朝、挨拶するかのように声を掛けた。
「よう」
「…結婚、おめでとう?」
突然自分を選んでやってきた綺羅々に、何が何だかわからず、イトナはとりあえず祝辞を述べてみる。綺羅々は鼻で笑う。
「全然めでたいって顔してないね」
それから綺羅々は、手に持った小さな花束をイトナに突き出した。
「あんたにあげる」
「…は?」
イトナはますます困惑する。
何で男の俺にブーケをくれるんだ。
「欲しい人、いっぱいいるのに。投げてやれよ」
先を焦る女性たちが、思いがけない展開に目を見開いている。綺羅々は彼女たちをちらりと一瞥したが、すぐにイトナに向き直った。
「あんたみたいなネンネにこそ、こんなお花ちゃんが相応しいのよ」
「…あのな」
呆れて言い返そうとするイトナを遮って、綺羅々はさらに続ける。
「いらないなら、早く良い女(ひと)見つけてその人にあげなよ。じゃあね」
綺羅々はそれだけ言うと、花婿の元へと戻る。
参列客が全員、呆気にとられて静まり返るのに構わず、花嫁は悠々と花婿の隣に立った。

「…友達?」
流石にびっくりしたらしい花婿が、花嫁に問いかける。花嫁は頷いた。
「弟みたいなの。まあ、同級生だけど…全く、いつまで経っても世話が焼ける」
そう言ってため息を吐く花嫁の憂いを含んだ横顔にはしかし、男女の恋慕や未練などといった感情は全く見受けられなかった。
花婿は安心して、花嫁と同じ方向を向いた。

「…相っ変わらず、ひでえ皮肉屋だあの女」
披露宴の席、村松が呆れたように言う。
「…大体何があったかわかったけど、気づいてやれなくて悪かったな」
寺坂が珍しく、すまなさそうに言う。
「ま、まあ、飲んで忘れようぜ…って、お前車だったっけ」
薄々勘付いてはいた吉田が、イトナのグラスにシャンパンを注ごうとして止める。
「じゃあ食べて忘れましょ」
寿美鈴が朗らかに言う。

イトナは貰ったブーケを、とっくり眺めていた。

気づいていたのか。全く、俺たちグループの男どもは、昔っからアイツには適わないようだ。

家に帰ったら、花瓶を買おう。そうしたら、コイツを綺麗に生けて、作業机の上にでも置いて、精々真っ黒に枯れ果てるまで愛でてやろう。
いつか出来る好きな女にやる花くらい、自分で選んで買ってやる。それくらいの甲斐性はある。

イトナはグラスを吉田に差し出す。
「ジンジャーエールで良いよ」
吉田は笑って、溢れんばかりになみなみと注いでくれた。

窓から入り込む6月の陽光を受けて、ジンジャーエールはきらきらと金色に煌めいた。

「今日は良い日だ」

イトナは小さく呟いた。

over

暗殺教室99感想とかいろいろ

アニメ、やっぱり深夜放送だって…しかもブランド化してるノイタミナでもないんだって…うわあああ集英社このあほんだら~!!一番この漫画支持してくれてる中学生高校生に見てもらえない時間帯にやってどうする!暗教を看板漫画にしたいんじゃなかったの?ヘタに朝とかにやって甘口にされるよりはいいとは思うけど…。日5、どーしてもとれんかったんだなあ。グッズ展開も相変わらず殺せんせーばっかりだし(可愛いんだけどね)出しさえすればきっと売れるであろう可愛いE組生のグッズは渚カルマ茅野のがごくわずかにある程度だし…どおも、商業展開があんましうまくないような気がするんだなあ…

99話、詳しい説明は省略するっス…重すぎて来週が怖くて仕方ない。そりゃあ、最近のビッチ先生のプロを忘れた色ボケちゃんっぷりは烏間先生から見て目に余るものがあったでしょうよ。全く気がないのにヘンに気を持たせる不実な人間よりずっとまともってのもわかる。でもね、ホンネとタテマエを分けて喋れるのもいい大人の条件として欠かせないものだと思うの、私。そんな言い方したら傷つけるのわかりきってるじゃない、カルマの言う通り、人心掌握も人の上に立つには大事な仕事なのよ。ビッチ先生の気持ちには気づいていたみたいだけど、やっぱり烏間先生はド堅物のハイパーウルトラ鈍感せんせーだよ。現時点では個人的に烏間先生の株は下がり気味。
そして独りになってしまったビッチ先生…彼女に迫る死神の鎌…
このまま、独りで死ぬんだとしたらあまりに哀れだぜ。甘っちょい展開でもいいから、誰か異常に気付いて助けに来てくれないだろうか。そして『暗殺教室は肩すかし多いな~』と誰かさんたちがまたしたり顔で言うのがいい。ビッチ先生かなり好きだからこんな早い段階で死なれたら私立ち直れない…読むのやめてしまうかもしれない…
そんでもってこんなバカ騒ぎにはやっぱり一人だけ参加しないイトナくん。もしかして、誰かビッチ先生助けてくれるとしたら彼なんだろか?身体能力高まってるとしたらビッチ先生連れて暫く逃げ回るくらいは出来そうだし(でも棒倒しハイジャンプは彼の専売特許ではなかったのだ)でも今回ばかりはビッチ先生を助けてくれるのは烏間であってほしいなあ。

県職員試験は一次受かって、面接対策してるんだけど、全然喋れません。あと一週間切ったよどーするよー。人生初めてのホモエロ小説なんざ書いてる場合じゃなかったよ~。

暗殺教室:緊張の夏、日本の夏

『美しい』がゲシュタルト崩壊しそうでした。勿論上手くいってほしいが、このカップルは杉野くんが神崎さんを大事にし過ぎてぎくしゃくしそうな悪寒。

杉神・白

「わあ、素敵」
神崎さんが硝子細工の店の前で立ち止まる。透明な赤やピンクや青のガラス玉が、細かい銀色の鎖に吊り下げられたペンダントがじゃらじゃらと飾られている。

好感度アップのチャンス、到来!

「絶対似合うよ!あの青いのとか良いんじゃない?」
オレはここぞとばかり褒め上げる。
「そう?でもピンクの方が浴衣には合うかなぁ」
神崎さんはたおやかに言う。そうだ、神崎さんは今日は青系の浴衣を着ているんだった。青いガラス玉は溶け込んで目立たなくなってしまうだろう。オレとしたことが。
しかし、流石神崎さんだ。深い藍色に、白い桔梗が染め抜かれた浴衣。古風だけど彼女によく似合っている。
「そうだね!やっぱりピンクだよね!!」
神崎さんはくすりと微笑む。
「着けてみよっか」
神崎さんはまずはピンクのガラス玉がついたペンダントを取って、首に下げてみた。美しい。
「どう?」
神崎さんは小首を傾げた。オレは心から、力を込めて褒める。
「すっごく、綺麗だよ!」
神崎さんはにっこり笑う。
「じゃあ、次は杉野くんが言ってたブルーね」
しなやかな手つきで長い髪の毛の下、首の後ろに手を入れて、鎖を外そうとする神崎さん。

ああ、この人は本物の天使だ、いや女神だ。何気ない一挙一動美しすぎて困る。

こんなに美しい人がオレなんかの彼女になってくれるなんて、まだ信じられない。週に一回はしているデート、オレはいつもドキドキだ。神崎さんの美しさに。ちゃんと神崎さんを大事に出来てるかどうかに。

今日は所謂、「三ヶ月記念日」。ちゃあんと覚えている。ああそうだ、これをプレゼントにするのも良いかな。綺麗だし、値段も二千円、女の子にあげる物としては妥当だろう。よし決めた。後は神崎さんが何色にするかだな。

「うーん…」
神崎さんが困ったように柳みたいな眉根を寄せる。
「どうしたの?」
オレが訊くと、神崎さんは控えめに微笑んだ。
「外れなく、なっちゃって。杉野くん、悪いんだけど外してくれない?髪の毛は上げてるから」
「お安いご用さ!」
オレは神崎さんの後ろに回って、神崎さんがその長くて真っ直ぐな黒い髪を持ち上げるのを待つ。
そんなオレの目に、恐ろしいほど清冽に飛び込んできた色。

しろい、うなじ。

オスカー・ワイルドじゃないけど、月より雪より、海の泡より真っ白な、神崎さんの素肌が、オレの視界を塗りつぶした。

「…」

オレはしばらく、浴衣の襟元から覗くうなじに目を奪われていた。

「…杉野くん?」
神崎さんに呼ばれて、オレははっと我に返る。
「ご、ごめんね。すぐ外すからね」
オレはペンダントの鎖を留める金具に指をかける。しかし、指が震えて巧く外せない。

神崎さんを、まだ付き合い始めて三ヶ月だっていうのに、そんな目で見るなんてダメだ。

でも、オレの脳内には思春期野郎特有の目眩く妄想、煩悩たちがもう、爆走を始めている。

浴衣の下は、もっと白いのかな。『まだ』三ヶ月なんじゃなくて、『もう』三ヶ月なんだ。何か進展があったっていいじゃないか。本当はもどかしく感じている、んだろう?いつも女神様のような笑顔の彼女に。何か見えない壁が、二人の間にあることに。

オレは、ぷんぷんと頭を激しく横に振った。そうして無理やり、真っ白い甘い幻影を振り払う。

「取れたよ神崎さん。次はブルーだったね?」
ピンクの方を元あった場所に戻しながら、ブルーの方を取って神崎さんに渡そうとする。
しかし、神崎さんはゆっくりと首を横に振った。
「ううん、もういいの。それより花火、そろそろ始まるから、いかない?」
オレは一瞬、何を言おうか迷ってしまった。しかし結局、彼女に従うしか思いつかなかった。
「そ、そうだね。それじゃ行こうか」

「あ、あれ寺坂君たちじゃない?」
「ホントだ。って、渚たちもいる、相変わらず仲良いな」
「奇遇ね」

そんな当たり障りのない話をしながら、オレたちは幻想的な縁日の夜を歩く。その時は、彼女の小さなため息にオレは気づかなかった。

『SOS!』

暗殺教室:緊張の夏、日本の夏

やっぱり話によって性格がブレブレなイト狭…実際の所どんな関係性なんだろう、姉弟みたいにのほのほ仲良くしてるのか、毒舌家同士ギスギスと言葉をぶつけあうのか…くっつけとか言わんから、会話してるとこ出ないかなあ。

イト狭・黒

「あ、鼻緒が切れた」
いつものメンバーでぶらぶらと夜店街を歩いていた時。光る小物が沢山並んだ店の前で狭間が突然立ち止まり、呟いた。
「マジか、大丈夫かよ」
村松が心配そうに言う。
「下駄屋…なんてのはないみてえだしなあ」
寺坂が両側にずらりと立ち並ぶ夜店たちを見回して言う。
「いや、ハンカチと五円玉がありゃ直せるらしいぞ?…俺はどーやるかわからないが」
吉田が言う。
それから三人は、何かを期待するかのような目で俺を見た。

…まあ、結論から言えば出来るが、めんどくさい。

「普通の靴を履いてくれば良かったのに」
ジーンズのポケットからシワになったハンカチと五円玉を取り出して、狭間の足下にしゃがみこみながらも俺は一言言わずにはいられない。
「煩いよ」
狭間がふてくされたように吐き捨てた。

女なんてのは、これだから。

ハンカチをひたすら細く細く捻りながら、狭間の下駄に手を触れた瞬間、俺は気づいてしまった。

くろい、つめ。

狭間のやたら骨ばって青白い足の先、十枚の爪は、一部の隙もなく艶々とした漆黒に塗られていた。

「…どうした?」
紐みたいになったハンカチを持ったまま、呆然と佇む俺を心配したのか、寺坂が馬鹿面で訊いてくる。
「…黒いマニキュアって、あるんだな」
俺が呟くと、狭間が面倒そうに訂正する。
「ペディキュア」

どっちでもいい。

俺は数回瞬きをして、気を取り直すと、なるべくテキパキと作業をする。一分もあればこんなの、普通に直せる。方法さえ知っていれば誰だって出来る簡単なお仕事だ。

「後日解いて洗って返せよ」
そう言って、俺は立ち上がった。

俺たちはまた、夜店を当て所なく巡り歩く。お面屋に殺せんせーのお面が飾ってあったとか、村松ん家は冷やし中華もマズいとか、色んな話題が浮かんでは消えるが、どうにも俺の脳裏から狭間の爪の色が消えてはくれなかった。

俺は正直、狭間がどんな格好してようと興味はなかった。こんな乳も尻も平べったい、見てても何も面白くない、ついでに性格も悪い女の格好なんか。でも、なんだってたかが爪がこんなに印象的だったんだろう。

俺はもう一度、狭間の足元をそっと盗み見る。青白い足の指先で、狭間の爪は変わらず黒く光っていた。狭間が歩く度、夜店の明かりを反射して、きらり、きらりと煌めいた。

いつの間にか狭間の足を凝視しながら、俺はようやく合点がいった。

所謂大人の女みたいに見えたんだ、こいつが。誰かを怖がらせる目的以外でこんなに綺麗に化粧する女心がこいつにあったのかとか、本当は中坊は読んじゃいけない本のおねーちゃんもしないようなどぎつい色だったとか、そんな理由で。

心の奥で、何かが燃える音がした。


「何よ、あんたつま先フェチなの?」
狭間の声でギクリと我に返る。
「なんでそうなる」
無表情を装って聞き返す。狭間はニヤニヤ笑っていた。
「ずっと下見てるからさ。」
「お前おっぱいフェチの上につま先フェチとか」
「しゃぶりたいとか踏まれたいとか?」
寺坂と村松が便乗してからかってくる。吉田だけは「女の子の前で…」と苦い顔だ。吉田のそういう意外に真面目なところは、嫌いじゃない。
俺は意識して、声音にドスを利かせて脅す。
「これ以上下らないこと抜かすなら刻んでランドセルに詰めるが。」
「おー怖」
全然怖いなんて思ってない様子で村松は笑った。
その時、耳をつんざく破裂音が頭の上で炸裂した。見上げると、紺色の空一杯に
七色の華輪が咲き誇っていた。
「…花火」
俺は空を指差して四人に言う。
「おー、ホントだ!綺麗だなあ」
「たーまやー」
「かぎやーじゃなかったっけ?」
「何か去年より豪華だな」
狙い通り、このトリ頭共は花火に心奪われて、この話題を忘れてくれた。俺も色とりどりに染まる空をじっとみる。刻々と変わる赤や黄色や緑の火花が、てらてら光る黒い色なんか忘れさせてくれる。

意識なんかしてない。断じて、気のせいだ。

『上を向いて歩こう!』

暗殺教室:緊張の夏、日本の夏

夏祭りテーマに三組の男女の、主にオトコノコのいわゆる『目覚め』的なものを。ちょっと気恥ずかしい夏の一コマを、皆様に。デュフフ…(←ゲス)

渚カエ・赤

「あっ、りんごあめ!!」
僕の隣を歩きながら綿菓子を頬張っていた茅野が、赤と白で彩られた出店を見つけて走り寄る。底の厚い、文字通り背伸びした下駄でかこかこかこ、とアスファルトを蹴って覚束ない足取りで走る茅野に、苦笑する。僕もゆっくりと歩いて茅野の後ろに立つ。砂糖が焼ける香ばしい香りが立ちこめている。縁日の匂いって、三分の一くらいはりんごあめ屋が出している、と僕は思う。
「りんごあめにも色とか大きさとか色々あるよね…あかいのだけじゃないんだ…」
ひとりごちながらちょっと身を屈めて色とりどりの飴がけされた果物たちを品定めする茅野の後ろ頭は、本当に可愛い。
「ぶどうあめやいちごあめも売ってるんだぁ、最近は色々あるんだなあ…」
横歩きで移動すると、サイドで結んだ二つの髪の房がウサギみたいにぴょこぴょこ揺れる。
「迷うけど…やっぱりお祭りだったらおっきな赤いりんごだよね…よし決めた!おじさん、これ下さい!!」
結局、一番オーソドックスなやつに決めたらしい。ぱあっと向日葵みたいな笑顔で店の中でも一番大きなりんごあめを指差した。
「あいよっ!300円ね」
僕は慌てて茅野から綿菓子やらお絵かきせんべいやら鈴カステラやら、両手一杯に抱えたお菓子類を受け取る。茅野はごめーん、と言って小さなポシェットから財布を取り出して白銅のコインを三枚おじさんの手のひらに乗せる。そのかわりに嬉々としてりんごの刺さった串を受け取った。

「んー!やっぱり夏はこれですなぁ!!」
ミョーに年寄りじみた口調で言って、茅野は幸せそうにりんごあめをしゃぶっている。
「おじいちゃんみたい。…浴衣汚すなよ?」
茅野が買ったお菓子たちをまだ抱えて持ってやりながら僕は笑う。なんだかんだ言って、僕は茅野の世話を焼くのが好きなのだ。
「きゃあ欠片が落ちた!」
茅野が不意に小さく叫ぶ。見ると、せっかくのきれいな朝顔柄のピンクの浴衣の、帯の近くに、透明な赤い欠片がぺとんとこびりついていた。
「もう、言わんこっちゃない」
そう言って、僕はズボンのポケットからハンカチを取り出そうとした、その時。僕の目は、心は、鮮烈すぎるそれに奪われた。

あかい、くちびる。

茅野の唇が、りんごあめの着色料で鮮やかに染め上げられていた。

しかも、普通にリップを塗ったとか、いつもお洒落な中村さんや倉橋さんがそうしているのとはまた違う。りんごあめを舐めていて、無作為に乱れて付いたそれは茅野の幼い顔立ちにはあまりにも不釣り合いで。それなのに視線が離せなくて。

僕は、ハンカチを持ったまま氷漬けにでもされたみたいに動きを止める。

…茅野は、お化粧とかあまりしない子だ。女子たちと比べても身長の低い僕よりさらに小さくて、そんなこともあって僕は茅野を妹みたいに思っている。…と思っていた。なのに、なんだろう、なんで、こんなにドキドキするんだろう。

茅野も、いつかこんな真っ赤な口紅なんか付けて街を闊歩する時が来るんだろうか?僕よりずっと背も高くてかっこいい男の人を連れて、腕を組んで歩くんだろうか?そして二人はいつしか本当に互いを好きになって、そして、そして…。

「…渚?」

茅野が不思議そうに呼びかける声で、はっと我に返る。

「どしたの?凄い怖い顔してた…」
茅野は心配そうに、また少し恐れているみたいな顔をして、僕のことをみている。
僕は意識して無理やり笑顔を作る。
「な、なんでもない、なんでもないよ。それよりりんごあめ、口の周りにもついてる。」
「えっ、ウソやだ」
茅野はパッと赤くなって右手で口を覆い隠す。
「ホント。」
僕はその右手をそっと引きはがし、ハンカチで口の周りの赤いのをゴシゴシ拭き取ってやる。
「んん…」
茅野がちょっと息苦しそうにするけど止めてあげない。
「全く、気をつけなきゃダメだって、茅野は女の子なんだから。」
僕はため息混じりに言う。茅野は照れ笑いしていた。
「ごめーん」

僕と茅野は、当分こんな感じで良い。

『Les sucettes!』

暗殺教室(イト狭):プリンセスの時間

捏造わんさかさ。原作での明らかな絡みっつったらモンテ・クリスト伯のアレしかない二人ですが、自分の名前が好きか嫌いかとか、家族がいるかいないかとか、家族からの愛を自覚しているかいないかとか、色々と対照的な二人だなあと思ってしまってから、イトナくん×狭間さん派(本命は…)でございます。まあ、全部こじつけの思い込みめいたものですがね。以降原作で彼らが恋に落ちようが落ちまいが、別の人を選ぼうが選ぶまいが、きっとそれが一番素敵な形ですので、松井先生のお話を楽しみにしております。誰ともカップル確定していない今は、勝手にイト狭推しておきます(笑)
同じカップル描いてるのに創作のジャンルによって随分性格が変わってしまうなあ。性格を掴み切れていないんだ。でも今日は可愛い二人が見たかった。




小さい頃、よく母親にディズニープリンセスの格好をさせられた。殆ど身に付かなかったけれど、ピアノとかバレエとか、女の子の習い事としてテンプレートなものは一通りやらされた。でも悲しいかな、生まれついての『ミス・肝試し日本代表』にそういうものたちは向いていなかった。ヒステリックな母親の性格もあって、年を食うごとに自分の心は荒んでいくばかり。家族が望む「可愛い女の子」像からはどんどん乖離していった。

今日は日曜日。綺羅々は朝から、近所のホームセンターのリボンやコサージュや、女の子らしい小物のコーナーに佇んでいた。
ホームセンターに立ち寄ったのに大きな意味はない。母親と日がな顔を合わせているのは嫌だったし、寺坂たちなど友達に会うのも何となくしんどかったし、行きつけの図書館は半年に一度の大清掃とかで臨時休業だったしでとにかく行き場所がなかったのだ。
そして、それはあまり良い選択ではなかったことを直ぐに思い知らされた。小さい子供の喚き声、泣き声、笑い声。休日のホームセンターは家族連れで溢れかえっていた。三十秒おきに鳴る店内放送。カートの車輪が擦れるガラガラ音。…煩い。

もう出ようかと思った矢先に、今いるファンシーな小物のコーナーが目に入った。そこに入ったのもまた、深い意味はなかった。でも、色とりどりのリボンやレースに、幼い頃を思い出してしまった。

魔女がリボンつけてらー。

随分からかわれたっけなぁ。相応しい仕返しはたっぷりくれてやったけど。

綺羅々はくくくと嗤う。隣にいた子供連れが親子共々泣きそうな顔して怖がってるけど、構うものか。

綺羅々は試しに、手近にあったピンクの大きな蝶リボンを手に取って髪につけて、備え付けの手垢だらけの小さな鏡を覗き込んでみた。

ファッションモンスターだ。

全体的に葬式色した容姿なのに、派手なリボンだけが異様に存在感を放って悪目立ちしている。しかも、それが自分の暗ぼったくて貧乏くさい顔をさらに引き立ててしまっている。

やっぱり、ミス肝試しはミス肝試しなんだよ。可愛い女の子なんて、理想を押し付けられても困るんだ。

綺羅々はため息をついて、リボンをぞんざいに元あった場所に戻した。それから、肩をいからせ小物コーナーを後にしようとした、その時。

「狭間。」
突然、綺羅々のすぐ背後で聞き覚えのありすぎる少年の声がした。びっくうぅ、とらしくもなく、飛び上がらんばかりに驚く綺羅々。険しい表情できっ、と振り向くとそこには、淡い色の逆巻いた髪をド派手なバンダナでまとめ上げた少年が買い物かごを下げて立っていた。クラスメートにして同じ班の転校生、堀部イトナ。触手人間としてはじめて会った時も、普通の少年として正式に彼がE組の生徒になった後も、これだけは変わらない鉄壁の無表情で、彼は前をぽけーんと見つめていた。
「…どうした?」
心臓を押さえて自分を睨み付ける綺羅々を、イトナは不思議そう(多分)に見ていた。
「な、なんでもない。なんであんたがここにいるのよ」
綺羅々は訊く。自分と、今いる場所のあまりのちぐはぐさが気になって、つい口調が荒くなる。しかしイトナはそれを気にする様子も見せず、買い物かごを掲げて見せた。中には、大小様々なネジとか、ドライバーとか、工具類がごちゃごちゃ詰め込まれていた。
「電子工作に足りないモノを買いに来た。ついでに食料品売り場でも見ていこうかとここを通りかかったら狭間がいた。それだけのことだ。」
イトナは淡々と答えた。一部の反論する隙もない、機械じみて理路整然とした説明だ。
確かに綺羅々から見て右側、通りの向かいの棚にはもう、冷凍食品が並んでいる。嘘ではなさそうだ。そもそも嘘を吐く理由もない。
綺羅々はため息をついた。

迂闊だった。椚が丘市で一番大きなホームセンターだ、誰かに遭わない方がおかしいのに。

「狭間は?」
イトナが訊いてきた。何してたの、という意味だろう。綺羅々は決まり悪そうに棚に並んでいる思い切りピンクなリボンたちを見た。
「えーと…」
「ああ、アクセサリーか」
綺羅々が答えるまでもなく、イトナは自分たちがいるコーナーの商品を見て、合点がいったらしい。からかって笑うでもなく、驚きおののくでもなく、ファンシーな桃色のデイジーがあしらわれたヘアゴムの袋を手にとって、イトナはまじまじとそれを観察していた。やがて綺羅々に向き直って言う。
「でも狭間にはこういうのは似合わないと思う」
綺羅々は舌打ちした。
「知ってるよ」

あんたが来る前にも鏡で見て、絶望的に似合わないのを自覚させられたからね。

「好きで似合わない人間に産まれたんじゃないんだけどね」
綺羅々はつい余計なことを口走る。

イトナは確かに皮肉屋の毒舌家だが、今回は悪意があって言ったわけではないことを解っていたのに。大体そんな言い方したら、私がこんなのが似合う可愛い娘になりたいみたいじゃないか。

「…黒とか白とか、もっとモノトーンなのが似合うと思う」
イトナは子猫のように透明で大きな目をじっとこっちに向けて大真面目な調子で言った。綺羅々は鼻で笑う。
「なんであんたにオシャレの手ほどき受けなきゃならないのよ、そんなだっさいバンダナしてるくせに」

ああ、本当に内面まで可愛くない。コイツは何も悪いことしてないのに。

イトナは傷ついたのか、しばらく黙りこんだ末に、無表情は変わらないながら僅かに目を伏せて呟いた。
「気に入ってるんだがな」
そして、くるりと踵を返す。
「特売品売り切れてしまうから。じゃあ、また明日」
イトナは冷凍食品コーナーに向かって歩いていく。アクセサリーコーナーを出る間際に、万引きでもしているかのように素早い動きで黒い幅広のカチューシャをかごに入れた。そしてそのまま綺羅々を振り返りもせずに遠ざかっていった。綺羅々は小さくなっていく、淡い髪色とバンダナの所為で小柄な割に随分目立つ後ろ姿を、目で送りながら怪訝に思う。

…工具類と食品を買いにきてなんでカチューシャ?
新しい糸成号の部品にでもするのだろうか。髪に引っ掛けるギザギザした部分は殺傷力高そうだものな。…そんなわけなかろう。

イトナは目当ての特売点心セットを買ったらさっさとホームセンターを後にしたようだった。綺羅々も食品コーナーをぶらりと見回ってみたが、既にイトナの姿はなかった。その日は誰とも会うこともなく、綺羅々は帰宅した。

次の日。母親と殆ど話をせずに家を出て、寺坂グループと合流して、バカ話しながら登校して、授業受けて暗殺仕掛けて休み時間にはまた寺坂グループとバカ話してと、とどのつまりはいつもと何ら変わらない平凡な平日を綺羅々は過ごした。イトナも相変わらずの平坦な無表情で、寺坂たちに冷酷な毒舌を吐いたり、じゃれあったりしていた。イトナは、昨日綺羅々に会ったことは話題にあげなかった。

そして放課後。寺坂たち含めクラスの殆どが暗殺訓練のために校庭に出払っていた。綺羅々はもとよりそんなに運動は得意ではないし、無駄に体を動かすより最近買ったジュスティーヌ物語の続きを早く読んでしまいたかったので教室に残った。みんなと行きましょうよ的なことをしつこく説得してくる異形の担任を頑なに無視し続けることでやり過ごし、ようやく一人になれたところで古めかしい文庫本を開いたところで、綺羅々はまたもや邪魔された。
「狭間。」
もう振り向くまでもない。イトナだ。寺坂たちと行ったんじゃなかったのか。
「何よ。」
綺羅々はページから目も離さずに返事した。イトナは言った。
「鏡持ってるだろ、見てみろ」
綺羅々は振り向いた。脳裏に浮かぶのは、先程食べた弁当の内容。ちくわの磯部揚げか、ほうれん草の胡麻逢えか。
「…何か顔についてるなら言って」
イトナは首をゆっくりと数回横に振った。そういうことではないらしい。
「いいから見てみろ」
訳も分からず強要されて、綺羅々は仕方なく手鏡を鞄から取り出した。母親に持たされた、ピンクのバラをちょこまかあしらったロココな手鏡。教室で取り出すのも恥ずかしいのに。
鏡に映った自分の顔には、確かに青海苔やほうれん草の一片も、ケチャップすらも付いてはいなかった。映っているのは、いつも通りの見慣れた陰気で、青白くて、痩せこけた自分の顔。…それがどうしたというのだろう?
「何なのよいった…い?!」
迷惑だという調子を隠しもせずに文句の一つでも垂れてやろうと口を開いた瞬間。鏡に映った自分の髪に、イトナの手甲を付けた手で何かが掛けられた。
鏡の中の自分は、数瞬前と違って美しい黒いカチューシャを髪に付けていた。
黒い幅広のカチューシャ、金の糸が数本クロスして飾り付けられていた。所々銀色のラメが塗られている。左右の耳の上あたりには、漆黒の小さな薔薇が一塊になってあしらわれている。ご丁寧にきらきら光る銀灰色の葉っぱまで付いていた。
「コサージュは川崎ローズを参考にした。八輪も作るのは大変だった」
イトナは訊かれもしないことを淡々と説明する。

いや、知りたいのはそーゆー匠のこだわりについてじゃなくて。

「これは何よ、これは。」
「見ての通りだ、昨日ホームセンターで買ったカチューシャを改良したものだ」

…寺坂グループのオトコ共は女子力高くなけりゃいけない法律でもあるのか。どいつもこいつも面に似合わずオトメンだ。

「そうじゃなくて、何でこれをわざわざ作ってくれるのかってことを訊きたいの。」
イトナは大きな澄んだ瞳を、また少し伏せた。それから例の平坦な口調で、しかしやや早口に呟いた。
「…狭間に似合うと思って。予想した通り、悪くない。綺麗だ」

き れ い

イトナの口から飛び出してきた爆弾のような褒め言葉に、綺羅々は文字通り、ぽかーんとしてしまった。
開いた口が塞がらないというか、鳩が豆鉄砲を食ったようというか。

きっと今の自分はとても間抜けな顔を晒しているんだろうな、ともやがかかった意識の片隅で考えているとき、教室を包み込む沈黙が、外からの声によって破られた。
「おいイトナ、てめーいつまでウンコしてんだよ!!」
寺坂の濁声だ。
イトナは窓の外に目を遣り、「下品な奴だ」とため息をつくと、窓の桟に足を掛けた。
「それはお前にやる。好きに使っていいぞ」
それだけぶっきらぼうにいうと、イトナは身軽に外に飛び出し、寺坂たちの居るところまで駆けていった。

綺羅々は鏡を少し自分から離して、胸から頭頂までが映るようにする。
見慣れた学生服に、貧相な顔。シックながら華やかなカチューシャだけが異様に存在感を放って悪目立ちしている。

…どこのパーティーにお呼ばれしたんだろうね私は。こんなの普段使いできるわけないじゃない。流石、クラウンメロンみたいなハイセンスなバンダナ颯爽と頭にくっつけて学校にくるだけあるわー。

綺羅々は心の中で毒ついた。

でも、きれい、か。

可愛いと同じくらい言われたことがない言葉だった。そして、可愛いよりは幾分嫌悪感の薄い言葉だ。

友達の行き過ぎたお茶目に付き合ってやるのも、たまには悪くないかもしれない。幸いまだ、人目はない。もう少しだけ付けててやってもいいだろう。

昼下がりの光を浴びて、髪には薔薇の花飾りをつけ、文庫本を再び開いた綺羅々は、優雅な女王のように微かに微笑んでいた。
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