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ハリポタ二次創作(セブリリ):セブルス・スネイプの一番幸運な日:後編

 バレンタインには間に合わなかった模様。ホワイトデーには間に合わせたからセフセフ。


 一つの望遠鏡が、月の光を鋭く反射した。それにつられて、他の望遠鏡や、月球儀も次々と連鎖するように月光を反射して、部屋中が眩ゆい七色の光に包まれた。大きなホタルの光のような玉がいくつもいくつも現れ、佇むセブルスとリリーの周りを様々な色に明滅しながら、くるくる、ふわふわと舞った。真昼より明るく、まるで上質なオパールの中にでも入り込んだような美しさに、セブルスとリリーはただ感嘆するほかなかった。
「わあ、きれい…」
リリーはうっとりと周りを見回した。
「ああ…」
 セブルスも同意した。しかし、些か眩しすぎる気もする。セブルスは眼を細め、瞬いた。
 ふわふわ舞う光の玉の一つが、ふわりとリリーの豊かな赤い髪を飾った。
「あら」
 リリーは嬉しそうに他の光の玉を捕まえて、セブルスの髪にも飾り付けた。
セブルスが驚いてリリーの触れた辺りに触ると、リリーは本当に楽しそうに笑いかけた。
「えへへ、お揃い~」
もっと幼い頃に戻ったみたいに笑う、リリーにつられて、セブルスも笑った。

 普段、セブルスもリリーも、二人で居てここまで笑うことはない。幸運の魔法薬、フェリックス・フェリシスを丸々一瓶飲んでまでセブルスが欲しかったのは、まさにそれだった。

 その笑顔を見られただけで、ここまで来た甲斐があったというものだ。

 それだけでも充分すぎるほどに幸せなのに、さらに驚くべきことが起こった。
無邪気に笑うリリーの頭の上、天井から何やら繊細な造りをした、銀細工の蔓のようなものが伸び出してきたことにセブルスは気付いた。それが一体何なのか理解した時、セブルスはパッと赤くなった。

 そんな、クリスマスにはもう遅いのに。

 暫く静かだったフェリックスが、セブルスの脳裏で囁いた。

 これは僕からの、ささやかなプレゼントだ。きっと彼女も、心のずっと奥底ではそれを望んでいる。

「…」
 セブルスは、暫くその、魅惑的に煌めく銀のヤドリギを困ったように見つめていた。

 これは、リリーとの関係を変える、一生に一度のチャンスかもしれない。

 セブルスは思案する。

 しかも、フェリックスの効果は今日一日ずっと思い知らされてきた通り。これが昨日とか、明日とか、とにかく今日以外のいずれの日ではどうなるか解らないが、フェリックスが効いている今であれば、リリーは絶対逃げたり嫌がったりしない筈だ。きっと白い顔をバラみたいに真っ赤にして、それでも笑顔で喜んでくれるはずだ。

 突如として突き付けられた選択に思い悩むセブルスに、フェリックスは最早何も言ってはこなかった。しかし、まるで急かすようにその枝をしゅるしゅると伸ばし始めたヤドリギが、フェリックスの意志を…いや、セブルス自身の望みを如実に現していた。

「どうしたの、セブルス?」

 急に黙り込んでしまったセブルスを不思議に思ったのか、リリーが訊いてきた。

 何も疑う様子もなく、ちょこんと小首を傾げたリリーを見て、セブルスの心は決まった。

 セブルスはニッコリ笑う。

 結果が例えわかりきって居たって、リリーの気持ちをちゃんと訊いてないのにそんなことしちゃダメだ。


セブルスはリリーを怖がらせないように、そっとリリーの頭上に手を伸ばした。それから、ぱきり、と軽い音を立ててヤドリギの枝を折った。

「あっ?!」
 セブルスが折り取ったものを見て、ヤドリギと女の子にまつわるジンクスについて知っていたらしいリリーが、パッと頬をバラ色に染める。そんなリリーに構わず、セブルスはヤドリギをサッサッと輪っか状に編み上げ、リリーの髪の上にそっと載せた。

「…」

 リリーは、びっくりしたような顔をして、セブルスが被せてくれた銀のヤドリギの輪に手を触れた。

「…ティアラがあれば、もっと可愛いと思ったんだ」
 セブルスは、照れ臭そうに笑った。
「…ありがとうセブルス!大事にするね!!」
 リリーはバラが満開に咲いたような大きな笑顔を見せた。

 それでいい。
 リリーが笑ってくれているなら、それがいい。

 セブルスは満足そうに微笑んでいた。

 やがて七色の光たちは一つ、また一つと消えていった。数分の後には、高揚感と寂しさだけ残して、天文学塔はいつもの、硝子の望遠鏡やら月球儀やらが、時折月の光を反射して幽かに煌めくだけの、薄暗い教室に戻ってしまった。光が現れてから、十五分と経っていなかった。
 教室内の様子があまりにいつもと変わらないので、今までのことが夢だったんじゃないかと思えてきたが、リリーの頭の上で変わらず輝くヤドリギのティアラだけが、今夜のことが現実だったと証明していた。
 あれだけ苦労してここまで来たのに、呆気ないものだ。でも、だからこそ美しいのかもしれない。

「そろそろ帰ろうか。送ってくよ」
 セブルスがリリーに手を差し出した。リリーはセブルスの手を握る。

 行きと同じように風の吹き荒ぶ中、城壁を伝っていくのは躊躇われたため、セブルスは教室の扉を少しだけ開けて外の様子を伺うが、廊下には他のカップルたちも、フィルチも、誰一人として残ってはいなかった。安心したような、寂しいような不思議な気持ちでセブルスとリリーはガランとした廊下を歩いていく。

 グリフィンドール塔の入り口、太ったレディの肖像画まで直ぐに到着した。太ったレディはいびきを掻いて眠っていた。
「セブ、今日はありがとう。楽しかった。」
リリーが言った。
「僕こそ。一緒に来てくれて、ありがとう。」
セブルスも心からそう言った。
「それじゃあ、おやすみ」
セブルスが太ったレディを後にしようとした時、リリーがセブルスの右手を引いて引き止めた。
「何?…!」
リリーの行動に、セブルスは驚いた。リリーはセブルスの頬にキスをしたのだ。

「…」
一瞬のことだった。セブルスは真っ赤になって呆然と立ち尽くしていた。リリーもセブルスと同じくらい赤くなって俯いていた。しかし、リリーはすぐに顔を上げてニッコリ笑った。
「…今日のお礼!じゃあねセブ、おやすみ!」

 リリーが肖像画の奥へと消えた後も、暫くセブルスはそのままだった。リリーの唇が触れた部分が、いつまでも熱を持って消えないかのようだった。

 マクゴナガルにも、フィルチにも、ポッターたちにも出会うことなく、七階から地下まで下りきる。闇の帝王の権力が強まりつつある中、益々物騒さを増した合い言葉を石像に告げればもうそこは、何も恐れることはない代わりに幸せも味気もないセブルスの日常生活の場所だった。

誰もが寝静まった部屋のベッドに音もなく戻り、セブルスは暫く物思いに耽っていた。

このまま眠って、醒めてしまったらもう全てが元通りだ。神さまなんているとしたら、なんて残酷なんだろう。

 その時、フェリックスが最後に、セブルスに囁いた。

 フェリックス・フェリシスは飲んだ人の潜在能力以上のことは出来ない。これから君が、本当に彼女に恋させることができるか、そうでないかは全て君自身に掛かっているのだ。

 セブルスは今日の楽しかったことを思い出してみた。そして、もしかして、ちょっとの勇気を持てば明日からもこんな毎日が待っているのかも、と少しだけ希望に胸を膨らませることが出来た。

「ありがとう、フェリックス」
セブルスは呟いて、目を閉じた。
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