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暗殺教室二次創作:同窓会の時間:前編

最終回はこんな感じでみんな息災であればよい。本誌バレ、捏造あり。四班と糸成くんを贔屓。取材してないので「この職業でこういう状況は有り得ない」てのも多分あり。


「先輩、お疲れ様です。今日はお先に失礼させていただきます。」
少し長い水色の髪を後ろで一つに括り、この職業に就く者としてはかなり小柄で、かっちりしたスーツに身を包んでいること以外では殆ど女性のような風貌をした青年…潮田渚が、相棒であり先輩でもある刑事に丁寧に頭を下げた。先輩は煙草をふかしながらひらひらと手を振った。
「おう。同窓会だっけ?」
「はい、中学の時の…時々会ってる人もいるけど、十年ぶりの人もいるので会うのが楽しみです。」
渚はそう答えて、はにかんだような笑顔を浮かべた。
「ちょうどデカい事件も無くて良かったな。あんま休めないんだから、楽しんでこいよ。ついでに彼女見つけてこい、また変なおっさんに言い寄られちまうぞ」
先輩刑事は、自分で言った冗談でガハハと豪快に笑った。ははは…と渚も愛想笑いで返して、カバンを持って部屋を出た。
建物の外に出ると、空の低い辺りにある雲が、鮮やかなピンクに染まっていた。都会では珍しく、ひぐらしの声がどこからか微かに聞こえてきて、深く吸い込んだ夏の夕暮れの風は、甘い香りがした。

同窓会の時間


「渚くん、久し振り。」
軽やかな調子の声がして、振り向くとサマーコートを羽織った涼やかな目元の赤い髪の青年が、眼鏡をかけて長い髪をさらりと下ろした女性と、ワイシャツの袖を二の腕まで捲り上げた大柄で逞しい青年を伴って手を振っていた。
「カルマ君!それに、奥田さんと寺坂君、ホントに久し振り!!」
赤羽カルマとは今でもたまに飲みには行くが、一緒にいる二人とはもう随分会っていない。それでも、直ぐに誰か解るのは、共に過ごした時間の濃さ故。
「おう渚!!お前相変わらずちっせえなあ、そんなんで刑事なんて務んのか?」
無精ひげが所々目立つ寺坂竜馬が、ガハハと笑う。今別れてきたばかりの先輩刑事と初めて会ったとき、真っ先に彼を思い出したものだ。
「刑事の仕事は頭脳労働でもあるの。体力バカだけの寺坂よりは向いてると思うけど?」
「何だとお?!」
寺坂をからかうカルマ、適わないのに立ち向かってまた返り討ちに合う寺坂。これも十年前とおんなじだ。
「お久しぶりです、渚くん。刑事さんなんて凄いです」
奥田愛美が、にっこり笑う。渚は首を横に振る。
「奥田さんには適わないよ」
彼女は今、世界的に名の知れた大規模な製薬会社で、製剤の研究をしていると云う。毎日CMで見るあの薬やこの薬が、彼女の手によって創り出されているなんて、もの凄いことだ。
「茅野さんと神崎さんは?どこで待ってるんだっけ」
寺坂のパンチを軽々受け止めて、カルマが訊いた。
「ああ、うん。カエデの会社の前で二人して待ってるって。カエデも忙しそうだから、ちゃんと居るかどうか心配だけど…」
「カエデだってさ、妬けちゃうねえ、愛美!」
渚が茅野を名前で呼んだことに対してカルマはすかさず反応し、さりげなく自分の恋人の肩を抱いた。
「カルマ君!」
渚と愛美は同時に真っ赤になって抗議する。本当に彼は、効率的に人をからかう天才だ。
「けっ、どいつもこいつもカップル成立しやがって。村松も原さ…いや寿美鈴さんと新婚だし」
「寺坂はガサツ過ぎるからさー、だから女の子逃げちゃうんじゃないのー?」
カルマがまた、悪い笑みを浮かべて寺坂をいじる。
「そ、その村松くんのとこだよね、今日の会場!」
再度カルマに掴み掛かろうとする寺坂を何とか宥めつつ、渚は話題を変える。
「どこだっけ?場所覚えてないんだ」
「ああ、松来軒だよ。驚くなよ、あの店あいつが厨房立つようになってから客は増えるわ地方のグルメ誌に乗るわ…こないだなんかテレビの取材が来たらしいぜ。知ってるだろ、『グルメ天国』」
「ああ、土曜の昼にやってる…」
カルマが呟くと、寺坂は益々得意そうな顔をした。
「今日は貸切だから遠慮なく呑めるぞ!早く行こうぜ!」
「茅野さんと神崎さん忘れないでね」
カルマが冷静にツッコミを入れる。

その松来軒では、店主の村松拓哉と、その妻である寿美鈴が料理に掃除に忙しく、宴会の準備をしていた。
「あっ!」
寿美鈴が各席にグラスを並べながら、不意に声を上げた。
「どうしたよ」
餃子がぎっちり並んだフライパンに差し水をしながら、拓哉は聞き返す。
「忘れるとこだった。拓哉さん、糸成くん起こしてきて。フライパン代わるから」
言うが早いか、寿美鈴はフライパンを拓哉から奪い取って餃子の世話を始めた。拓哉は天井を見上げる。
「ああ…このままほっといたら絶対寝過ごすよな、あいつ」
世話が焼ける、と呟いて、拓哉は厨房から居住スペースに引っ込んで、細くて急でギシギシ軋む階段を登っていった。中学時代に使っていた部屋のドアをあけると果たして、拓哉の親友の堀部糸成は、白衣を毛布替わりに掛けて、カーペットに直に寝転んで、惰眠を貪っていた。バンダナもつけたままだ。
人が一生懸命準備してるのに呑気に寝こけやがって。
そう思うと無性に腹が立ち、拓哉はエプロンのポケットに丸めて突っ込んであった雑巾を、糸成の整った顔に投げつけてやった。
「…俺は手伝えないと言った筈だが」
糸成はべしゃべしゃの雑巾を鬱陶しそうに顔から矧がしながら、うめいた。
「ちげえよ、お前に手伝いなんて求めてねえよ。…そろそろ始まるぞ」
拓哉が無造作に親指で後ろを指す。糸成はそれですっかり目が覚めたようだった。

「あっ」
愛美が声を上げて手を振った。
愛美が見ている方向から、二人の女性がハイヒールの足で器用に走りながら向かってきた。
「渚!愛美!あとカルマ君に寺坂君久し振り!!」
二人の内、緑のセミロングの髪をふんわり巻いて、薄ピンクのブラウスにひらりとしたグレーのスカートを着こなした小柄な女性…茅野カエデが息を切らしてにっこり笑う。
「会社まで迎えに行くつもりだったのに!!」
渚が嬉しさと困惑が混ざった表情でカエデに笑顔を返した。
「珍しく早く終わったんだぁ。前から今日は早く帰りたいって言っておいたから、みんな気を使ってくれたみたい…」
カエデは今、ある製菓会社で営業の仕事に就いている。本当は商品開発に携わりたかったようだけれど、営業で消費者がどんな商品を求めているかしっかり勉強して、いつか異動させてもらうんだと言っていた。
「渚くんにカルマ君、お久しぶり。」
スレンダーで、長い黒髪を頭の上でふわりとまとめ上げた、ピンストライプのブラウスとパンツスーツの女性が淑やかに微笑んだ。神崎有希子。E組男子の殆どが憧れた、クラス一のマドンナはあの頃よりもさらにグレードアップした美しさでそこにいた。
「神崎さん!」
男性陣の目線は一瞬だが彼女に釘付けになる。女性たちもそれを咎めなかった。
「神崎さん、勿論とてもよく似合っているけど、そういう格好ちょっと意外な気がする。」
カルマが言った。神崎さんは微笑んだままで答えた。
「介護士の仕事って結構力も使うの。こういう格好じゃないと、動きにくくて。」
「介護士って大変じゃない?神崎さんみたいに綺麗だとおかしなじいさんとかちょっかい出してきたり」
「カルマ君、それはセクハラです」
あまりに遠慮の無いカルマの質問に、愛美が窘める。神崎さんは愛美に対して「良いのよ」と顔の前で手を振った。
「確かに色んなお客様がいるわね。でも、大分慣れたし、そう言う人への対処も出来るようになってきたの。そんなこともあるけど、私お客様が『ありがとねえ』、って笑ってくれるのが好き。誰かに必要とされるって、素敵なことよ。」
有希子は締めくくると、やっぱり淑やかに微笑んだ。
彼女が美しいのは、外見だけでは決してない。意志が強く、一生懸命。彼女も素敵な大人になっていた。

「あっ、見えてきた松来軒。」
カエデが指を指す方向には、住宅街に紛れてひっそり佇む、知る人ぞ知る名店の看板があった。
「楽しみですね…って、あれ?」
愛美がこちらに向かって飛んでくる何かに気付いた。黄昏の空を背景に飛ぶ、小さな白いヘリコプター。
それは真っ直ぐに、狙ったかのように渚のそばにやってくると、渚の胸の前辺りでふわふわと浮かんだ。
「取れ、ってことかな」
カエデが助言した。渚が両手をお椀にしてヘリコプターに向かって差し出すと、ヘリコプターははたっと動きを止めて渚の手のひらに着地した。機体にサイン、『糸成百八号』。
それを見るや、渚は松来軒に向かって走り出した。渚について、カルマ、カエデ、愛美、有希子、寺坂も走り出す。
「よう」
店の前で急停止して、上を見上げると剥き出しのコンクリートの壁に開いた、窓の一つから白衣を羽織り、バンダナを巻いた男が顔を出していた。
「糸成くん!」
渚が呼ぶと、糸成は窓から身を乗り出して、ひらりと飛び降りた。二階なのに…。
「渚、相変わらず小さいな。」
糸成は渚の頭をわざとらしくくしゃくしゃと撫でる。初めてE組に彼が来た時、カルマにそうしたことを覚えているのか。
「それ言われ飽きたよ!糸成くんだって大して変わらないくせに!」
渚は糸成の手から逃れながら言い返した。
「糸成くんここに住んでるの?」
カルマが糸成に聞いた。糸成は首を横に振った。
「いや、少し部屋を借りて仮眠を取っていただけだ。研究室の教授が寺坂以上の無能でな。細かい仕事を全部俺に押し付けてくれるお陰でD論が全然進まない」
そう言って、ふわわと大きな欠伸をぶちかます糸成の目の下には、確かにクマが色濃く浮き出ている。顔色も少し白い。
「おめーはどうして誰かをディスる時に必ず俺を例えに出さないと気が済まねえんだ?」
寺坂は怒る。そんな彼をまたまた宥めながら、今度は渚が聞いた。
「ロボット工学研究室、だっけ?」
「ああ。介護用ロボットの研究をしている。そう、いつか神崎さんに使ってもらうことになるかもな」
介護と聞いて、まあ、と両手を合わせた有希子に頷いてみせながら、糸成は答えた。
「ま、立ち話も何だから。」
糸成が店を指さした。
「おう、それじゃ邪魔するぜ!」
寺坂が先陣切って、ガラガラと引き戸を開けた。
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