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暗殺教室(イト狭):プリンセスの時間

捏造わんさかさ。原作での明らかな絡みっつったらモンテ・クリスト伯のアレしかない二人ですが、自分の名前が好きか嫌いかとか、家族がいるかいないかとか、家族からの愛を自覚しているかいないかとか、色々と対照的な二人だなあと思ってしまってから、イトナくん×狭間さん派(本命は…)でございます。まあ、全部こじつけの思い込みめいたものですがね。以降原作で彼らが恋に落ちようが落ちまいが、別の人を選ぼうが選ぶまいが、きっとそれが一番素敵な形ですので、松井先生のお話を楽しみにしております。誰ともカップル確定していない今は、勝手にイト狭推しておきます(笑)
同じカップル描いてるのに創作のジャンルによって随分性格が変わってしまうなあ。性格を掴み切れていないんだ。でも今日は可愛い二人が見たかった。




小さい頃、よく母親にディズニープリンセスの格好をさせられた。殆ど身に付かなかったけれど、ピアノとかバレエとか、女の子の習い事としてテンプレートなものは一通りやらされた。でも悲しいかな、生まれついての『ミス・肝試し日本代表』にそういうものたちは向いていなかった。ヒステリックな母親の性格もあって、年を食うごとに自分の心は荒んでいくばかり。家族が望む「可愛い女の子」像からはどんどん乖離していった。

今日は日曜日。綺羅々は朝から、近所のホームセンターのリボンやコサージュや、女の子らしい小物のコーナーに佇んでいた。
ホームセンターに立ち寄ったのに大きな意味はない。母親と日がな顔を合わせているのは嫌だったし、寺坂たちなど友達に会うのも何となくしんどかったし、行きつけの図書館は半年に一度の大清掃とかで臨時休業だったしでとにかく行き場所がなかったのだ。
そして、それはあまり良い選択ではなかったことを直ぐに思い知らされた。小さい子供の喚き声、泣き声、笑い声。休日のホームセンターは家族連れで溢れかえっていた。三十秒おきに鳴る店内放送。カートの車輪が擦れるガラガラ音。…煩い。

もう出ようかと思った矢先に、今いるファンシーな小物のコーナーが目に入った。そこに入ったのもまた、深い意味はなかった。でも、色とりどりのリボンやレースに、幼い頃を思い出してしまった。

魔女がリボンつけてらー。

随分からかわれたっけなぁ。相応しい仕返しはたっぷりくれてやったけど。

綺羅々はくくくと嗤う。隣にいた子供連れが親子共々泣きそうな顔して怖がってるけど、構うものか。

綺羅々は試しに、手近にあったピンクの大きな蝶リボンを手に取って髪につけて、備え付けの手垢だらけの小さな鏡を覗き込んでみた。

ファッションモンスターだ。

全体的に葬式色した容姿なのに、派手なリボンだけが異様に存在感を放って悪目立ちしている。しかも、それが自分の暗ぼったくて貧乏くさい顔をさらに引き立ててしまっている。

やっぱり、ミス肝試しはミス肝試しなんだよ。可愛い女の子なんて、理想を押し付けられても困るんだ。

綺羅々はため息をついて、リボンをぞんざいに元あった場所に戻した。それから、肩をいからせ小物コーナーを後にしようとした、その時。

「狭間。」
突然、綺羅々のすぐ背後で聞き覚えのありすぎる少年の声がした。びっくうぅ、とらしくもなく、飛び上がらんばかりに驚く綺羅々。険しい表情できっ、と振り向くとそこには、淡い色の逆巻いた髪をド派手なバンダナでまとめ上げた少年が買い物かごを下げて立っていた。クラスメートにして同じ班の転校生、堀部イトナ。触手人間としてはじめて会った時も、普通の少年として正式に彼がE組の生徒になった後も、これだけは変わらない鉄壁の無表情で、彼は前をぽけーんと見つめていた。
「…どうした?」
心臓を押さえて自分を睨み付ける綺羅々を、イトナは不思議そう(多分)に見ていた。
「な、なんでもない。なんであんたがここにいるのよ」
綺羅々は訊く。自分と、今いる場所のあまりのちぐはぐさが気になって、つい口調が荒くなる。しかしイトナはそれを気にする様子も見せず、買い物かごを掲げて見せた。中には、大小様々なネジとか、ドライバーとか、工具類がごちゃごちゃ詰め込まれていた。
「電子工作に足りないモノを買いに来た。ついでに食料品売り場でも見ていこうかとここを通りかかったら狭間がいた。それだけのことだ。」
イトナは淡々と答えた。一部の反論する隙もない、機械じみて理路整然とした説明だ。
確かに綺羅々から見て右側、通りの向かいの棚にはもう、冷凍食品が並んでいる。嘘ではなさそうだ。そもそも嘘を吐く理由もない。
綺羅々はため息をついた。

迂闊だった。椚が丘市で一番大きなホームセンターだ、誰かに遭わない方がおかしいのに。

「狭間は?」
イトナが訊いてきた。何してたの、という意味だろう。綺羅々は決まり悪そうに棚に並んでいる思い切りピンクなリボンたちを見た。
「えーと…」
「ああ、アクセサリーか」
綺羅々が答えるまでもなく、イトナは自分たちがいるコーナーの商品を見て、合点がいったらしい。からかって笑うでもなく、驚きおののくでもなく、ファンシーな桃色のデイジーがあしらわれたヘアゴムの袋を手にとって、イトナはまじまじとそれを観察していた。やがて綺羅々に向き直って言う。
「でも狭間にはこういうのは似合わないと思う」
綺羅々は舌打ちした。
「知ってるよ」

あんたが来る前にも鏡で見て、絶望的に似合わないのを自覚させられたからね。

「好きで似合わない人間に産まれたんじゃないんだけどね」
綺羅々はつい余計なことを口走る。

イトナは確かに皮肉屋の毒舌家だが、今回は悪意があって言ったわけではないことを解っていたのに。大体そんな言い方したら、私がこんなのが似合う可愛い娘になりたいみたいじゃないか。

「…黒とか白とか、もっとモノトーンなのが似合うと思う」
イトナは子猫のように透明で大きな目をじっとこっちに向けて大真面目な調子で言った。綺羅々は鼻で笑う。
「なんであんたにオシャレの手ほどき受けなきゃならないのよ、そんなだっさいバンダナしてるくせに」

ああ、本当に内面まで可愛くない。コイツは何も悪いことしてないのに。

イトナは傷ついたのか、しばらく黙りこんだ末に、無表情は変わらないながら僅かに目を伏せて呟いた。
「気に入ってるんだがな」
そして、くるりと踵を返す。
「特売品売り切れてしまうから。じゃあ、また明日」
イトナは冷凍食品コーナーに向かって歩いていく。アクセサリーコーナーを出る間際に、万引きでもしているかのように素早い動きで黒い幅広のカチューシャをかごに入れた。そしてそのまま綺羅々を振り返りもせずに遠ざかっていった。綺羅々は小さくなっていく、淡い髪色とバンダナの所為で小柄な割に随分目立つ後ろ姿を、目で送りながら怪訝に思う。

…工具類と食品を買いにきてなんでカチューシャ?
新しい糸成号の部品にでもするのだろうか。髪に引っ掛けるギザギザした部分は殺傷力高そうだものな。…そんなわけなかろう。

イトナは目当ての特売点心セットを買ったらさっさとホームセンターを後にしたようだった。綺羅々も食品コーナーをぶらりと見回ってみたが、既にイトナの姿はなかった。その日は誰とも会うこともなく、綺羅々は帰宅した。

次の日。母親と殆ど話をせずに家を出て、寺坂グループと合流して、バカ話しながら登校して、授業受けて暗殺仕掛けて休み時間にはまた寺坂グループとバカ話してと、とどのつまりはいつもと何ら変わらない平凡な平日を綺羅々は過ごした。イトナも相変わらずの平坦な無表情で、寺坂たちに冷酷な毒舌を吐いたり、じゃれあったりしていた。イトナは、昨日綺羅々に会ったことは話題にあげなかった。

そして放課後。寺坂たち含めクラスの殆どが暗殺訓練のために校庭に出払っていた。綺羅々はもとよりそんなに運動は得意ではないし、無駄に体を動かすより最近買ったジュスティーヌ物語の続きを早く読んでしまいたかったので教室に残った。みんなと行きましょうよ的なことをしつこく説得してくる異形の担任を頑なに無視し続けることでやり過ごし、ようやく一人になれたところで古めかしい文庫本を開いたところで、綺羅々はまたもや邪魔された。
「狭間。」
もう振り向くまでもない。イトナだ。寺坂たちと行ったんじゃなかったのか。
「何よ。」
綺羅々はページから目も離さずに返事した。イトナは言った。
「鏡持ってるだろ、見てみろ」
綺羅々は振り向いた。脳裏に浮かぶのは、先程食べた弁当の内容。ちくわの磯部揚げか、ほうれん草の胡麻逢えか。
「…何か顔についてるなら言って」
イトナは首をゆっくりと数回横に振った。そういうことではないらしい。
「いいから見てみろ」
訳も分からず強要されて、綺羅々は仕方なく手鏡を鞄から取り出した。母親に持たされた、ピンクのバラをちょこまかあしらったロココな手鏡。教室で取り出すのも恥ずかしいのに。
鏡に映った自分の顔には、確かに青海苔やほうれん草の一片も、ケチャップすらも付いてはいなかった。映っているのは、いつも通りの見慣れた陰気で、青白くて、痩せこけた自分の顔。…それがどうしたというのだろう?
「何なのよいった…い?!」
迷惑だという調子を隠しもせずに文句の一つでも垂れてやろうと口を開いた瞬間。鏡に映った自分の髪に、イトナの手甲を付けた手で何かが掛けられた。
鏡の中の自分は、数瞬前と違って美しい黒いカチューシャを髪に付けていた。
黒い幅広のカチューシャ、金の糸が数本クロスして飾り付けられていた。所々銀色のラメが塗られている。左右の耳の上あたりには、漆黒の小さな薔薇が一塊になってあしらわれている。ご丁寧にきらきら光る銀灰色の葉っぱまで付いていた。
「コサージュは川崎ローズを参考にした。八輪も作るのは大変だった」
イトナは訊かれもしないことを淡々と説明する。

いや、知りたいのはそーゆー匠のこだわりについてじゃなくて。

「これは何よ、これは。」
「見ての通りだ、昨日ホームセンターで買ったカチューシャを改良したものだ」

…寺坂グループのオトコ共は女子力高くなけりゃいけない法律でもあるのか。どいつもこいつも面に似合わずオトメンだ。

「そうじゃなくて、何でこれをわざわざ作ってくれるのかってことを訊きたいの。」
イトナは大きな澄んだ瞳を、また少し伏せた。それから例の平坦な口調で、しかしやや早口に呟いた。
「…狭間に似合うと思って。予想した通り、悪くない。綺麗だ」

き れ い

イトナの口から飛び出してきた爆弾のような褒め言葉に、綺羅々は文字通り、ぽかーんとしてしまった。
開いた口が塞がらないというか、鳩が豆鉄砲を食ったようというか。

きっと今の自分はとても間抜けな顔を晒しているんだろうな、ともやがかかった意識の片隅で考えているとき、教室を包み込む沈黙が、外からの声によって破られた。
「おいイトナ、てめーいつまでウンコしてんだよ!!」
寺坂の濁声だ。
イトナは窓の外に目を遣り、「下品な奴だ」とため息をつくと、窓の桟に足を掛けた。
「それはお前にやる。好きに使っていいぞ」
それだけぶっきらぼうにいうと、イトナは身軽に外に飛び出し、寺坂たちの居るところまで駆けていった。

綺羅々は鏡を少し自分から離して、胸から頭頂までが映るようにする。
見慣れた学生服に、貧相な顔。シックながら華やかなカチューシャだけが異様に存在感を放って悪目立ちしている。

…どこのパーティーにお呼ばれしたんだろうね私は。こんなの普段使いできるわけないじゃない。流石、クラウンメロンみたいなハイセンスなバンダナ颯爽と頭にくっつけて学校にくるだけあるわー。

綺羅々は心の中で毒ついた。

でも、きれい、か。

可愛いと同じくらい言われたことがない言葉だった。そして、可愛いよりは幾分嫌悪感の薄い言葉だ。

友達の行き過ぎたお茶目に付き合ってやるのも、たまには悪くないかもしれない。幸いまだ、人目はない。もう少しだけ付けててやってもいいだろう。

昼下がりの光を浴びて、髪には薔薇の花飾りをつけ、文庫本を再び開いた綺羅々は、優雅な女王のように微かに微笑んでいた。
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