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暗殺教室:緊張の夏、日本の夏

夏祭りテーマに三組の男女の、主にオトコノコのいわゆる『目覚め』的なものを。ちょっと気恥ずかしい夏の一コマを、皆様に。デュフフ…(←ゲス)

渚カエ・赤

「あっ、りんごあめ!!」
僕の隣を歩きながら綿菓子を頬張っていた茅野が、赤と白で彩られた出店を見つけて走り寄る。底の厚い、文字通り背伸びした下駄でかこかこかこ、とアスファルトを蹴って覚束ない足取りで走る茅野に、苦笑する。僕もゆっくりと歩いて茅野の後ろに立つ。砂糖が焼ける香ばしい香りが立ちこめている。縁日の匂いって、三分の一くらいはりんごあめ屋が出している、と僕は思う。
「りんごあめにも色とか大きさとか色々あるよね…あかいのだけじゃないんだ…」
ひとりごちながらちょっと身を屈めて色とりどりの飴がけされた果物たちを品定めする茅野の後ろ頭は、本当に可愛い。
「ぶどうあめやいちごあめも売ってるんだぁ、最近は色々あるんだなあ…」
横歩きで移動すると、サイドで結んだ二つの髪の房がウサギみたいにぴょこぴょこ揺れる。
「迷うけど…やっぱりお祭りだったらおっきな赤いりんごだよね…よし決めた!おじさん、これ下さい!!」
結局、一番オーソドックスなやつに決めたらしい。ぱあっと向日葵みたいな笑顔で店の中でも一番大きなりんごあめを指差した。
「あいよっ!300円ね」
僕は慌てて茅野から綿菓子やらお絵かきせんべいやら鈴カステラやら、両手一杯に抱えたお菓子類を受け取る。茅野はごめーん、と言って小さなポシェットから財布を取り出して白銅のコインを三枚おじさんの手のひらに乗せる。そのかわりに嬉々としてりんごの刺さった串を受け取った。

「んー!やっぱり夏はこれですなぁ!!」
ミョーに年寄りじみた口調で言って、茅野は幸せそうにりんごあめをしゃぶっている。
「おじいちゃんみたい。…浴衣汚すなよ?」
茅野が買ったお菓子たちをまだ抱えて持ってやりながら僕は笑う。なんだかんだ言って、僕は茅野の世話を焼くのが好きなのだ。
「きゃあ欠片が落ちた!」
茅野が不意に小さく叫ぶ。見ると、せっかくのきれいな朝顔柄のピンクの浴衣の、帯の近くに、透明な赤い欠片がぺとんとこびりついていた。
「もう、言わんこっちゃない」
そう言って、僕はズボンのポケットからハンカチを取り出そうとした、その時。僕の目は、心は、鮮烈すぎるそれに奪われた。

あかい、くちびる。

茅野の唇が、りんごあめの着色料で鮮やかに染め上げられていた。

しかも、普通にリップを塗ったとか、いつもお洒落な中村さんや倉橋さんがそうしているのとはまた違う。りんごあめを舐めていて、無作為に乱れて付いたそれは茅野の幼い顔立ちにはあまりにも不釣り合いで。それなのに視線が離せなくて。

僕は、ハンカチを持ったまま氷漬けにでもされたみたいに動きを止める。

…茅野は、お化粧とかあまりしない子だ。女子たちと比べても身長の低い僕よりさらに小さくて、そんなこともあって僕は茅野を妹みたいに思っている。…と思っていた。なのに、なんだろう、なんで、こんなにドキドキするんだろう。

茅野も、いつかこんな真っ赤な口紅なんか付けて街を闊歩する時が来るんだろうか?僕よりずっと背も高くてかっこいい男の人を連れて、腕を組んで歩くんだろうか?そして二人はいつしか本当に互いを好きになって、そして、そして…。

「…渚?」

茅野が不思議そうに呼びかける声で、はっと我に返る。

「どしたの?凄い怖い顔してた…」
茅野は心配そうに、また少し恐れているみたいな顔をして、僕のことをみている。
僕は意識して無理やり笑顔を作る。
「な、なんでもない、なんでもないよ。それよりりんごあめ、口の周りにもついてる。」
「えっ、ウソやだ」
茅野はパッと赤くなって右手で口を覆い隠す。
「ホント。」
僕はその右手をそっと引きはがし、ハンカチで口の周りの赤いのをゴシゴシ拭き取ってやる。
「んん…」
茅野がちょっと息苦しそうにするけど止めてあげない。
「全く、気をつけなきゃダメだって、茅野は女の子なんだから。」
僕はため息混じりに言う。茅野は照れ笑いしていた。
「ごめーん」

僕と茅野は、当分こんな感じで良い。

『Les sucettes!』
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