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暗殺教室(イト→狭):花の名を知らない

『吉原』もさり気にあるから遊んでいってくんなましー!!(←メジャーカプ名に頼るな)あんまりシモいのばかり書いてると嫌われちゃうから、今日は綺麗なお話。E組生ではない、皆様の知らない男の人と結婚する綺羅々ちゃんと、彼女を送る実は綺羅々ちゃんが好きだったイトナくんのお話どす。本誌バレに捏造注意。
結婚式行ったこと無す。おかしな点が有ってもご容赦下さい。


202×年、6月15日。ずっと降り続いていた雨が奇跡的に上がって、その日は一日晴れていた。雨が空気の汚れをきれいさっぱり洗い流したのか、何とも瑞々しく澄み切った青空だった。
車から降りて、空を見上げたイトナは思う、
良い日だ、と。

式場には、もう随分多くの人が集まっていた。その中には知った顔もちらほら見受けられる。

寺坂とか村松とか、吉田とかが居れば安心なんだが、と、中学校以来一番仲が良かったメンバーの顔を人混みの中きょろきょろと探しながら、イトナは受け付けに向かう。そしてパイプ椅子に座るややふくよかな女性に気づいた。

吉田寿美鈴。吉田大成の妻である。イトナにとっても元クラスメートだ。

「あ、イトナくん久し振り。」
寿美鈴はイトナの視線に気が付いて、彼より早く自分から声をかける。イトナは軽く会釈して、鞄から水引のついた封筒を取り出す。
「ご祝儀」
寿美鈴は封筒を表、裏と見て確認するとにっこり笑った。
「ありがとう。…少し髪の毛切った?」
「夏だからな。変か?」
会って直ぐに髪を切ったことに気づかれるのは、似合ってないからだという話を思い出して、イトナは無意識的に髪を触りながら訊く。寿美鈴は首を横に振った。
「全然、似合うよ。大成くんも切ったんだよ、床屋さん行くの面倒くさいなんて言うから、私が。あの人の毛質、難しいのよ…」
そう言ってうふふと笑う、寿美鈴はすっかり奥さんの顔だ。

相変わらず、仲が良いらしい。それは良いことだ。とても、良いことだ。

「大成くんなら向こうの席に居るから。寺坂くんたちも一緒だよ」
寿美鈴が指差した方向には、確かに見慣れた三人が固まって座っていた。イトナは思わず息を吐く。安心したのだ。
「ありがとう」
そう言って、イトナは彼らが居る席へと向かった。

「ようイトナ」
寺坂がいち早く気付いて手を挙げる。村松が席を少し詰める。イトナは手を挙げ返してそこに座った。
「忙しいっつってたのに悪いな。」
吉田が何故か謝った。イトナは首をゆっくりと横に振る。
「友達の結婚式だ、当然だろ」
村松が、しばらくイトナの横顔を様子を窺うように見ていたが、イトナがその視線に気付いたのをきっかけに、口を開いた。
「…大丈夫か?」
「何が」
村松は声を潜め、イトナの耳元で早口に言う。
「狭間のことだよ。好きだったんだろ?」
イトナは一瞬、目を大きく瞠る。
なんで、知ってるんだコイツ。
しかし、すぐにいつものポーカーフェイスを繕った。
「…心配されなくても、俺は祝うつもりでここに来ている。」
すっ呆けることも出来たが、あまり意味のないことはしたくない。イトナはさらりと答えた。
「…」
村松は、それでも心配そうにイトナを見ている。村松は昔から、割と世話焼きだ。イトナも口に出したことはないが、本当はそれに感謝していた。
「村松が気に病むことは何もない。俺は、『五人』でいる方が、もっと好きだったんだ」
「…そうか」
真っ直ぐ前を見つめるイトナの透明な眼差しに、村松はもう何も言わなかった。
「そういや今日って、お前が初めてE組に来た日だろ?」
イトナと村松の会話に気付いていなかったらしい寺坂が、後ろから口を挟む。
「…そうだっけ」

あんまり、覚えてない。触手を付けていた頃全般がそうなんだけれど。改造人間として過ごした期間は、実はそれ程長くはなかったが、あの頃は恨みとか妄執とかに支配されて、ずっと朦朧としていたから。

「そうそう、お前初登場いきなり壁ぶっ壊して、『俺は壁より強いことが証明された』って。」
「あん時ゃビックリしたけど、今思い出すと笑えるなあ」
吉田と寺坂が楽しそうに笑う。からかってはいるのだろうが、そこに不快な悪意は感じない。イトナも少し笑う。
「そんなこともした気がする」
「あんなに衝撃的だったのにお前本人は『気がする』かよ、なんか寂しいなぁ」
村松も会話に加わってきた。
「9月以降のことははっきり覚えてるぞ」
触手が取れて、正式にE組の仲間になった後のことは。あの半年間は、人生の中で一番鮮やかな日々だったから。モノクロの記憶が、そこから総天然色になったみたいな。

「コードネーム付けて訓練やったよな」
「へちまって書いたのお前だってな、アレ何でだよ」
「何となく?まさかゲロまずラーメンとか書くわけにも行かなかっただろ」
「もうゲロじゃねえよっ!!」
「体育祭、お前凄かったよな」
「結局E組の大体が出来るようになったじゃないか、凄くなんてない」
「ガイジン部隊に吹っ飛ばされた俺たちを忘れて貰っちゃ困るぜ」
「受け身っつったって痛かったんだから」
「俺、あの松方さんの入れ歯ベル、今でも有り得ないと思ってるんだが…」
「何でだよ!面白ぇじゃん入れ歯ベル」
「俺もないわーと思ってた…考えたの吉田だったのか」
「まじかよ絶不評」

…こんな風に、みんなで集まれば、次から次へと話したいことは浮かんで尽きない。十年経っても、それは変わらない。

他にも色々、本当に色々あった。苦しいことも、悲しいことも、全部全部。

でも、こいつらが居る限りどんなことだってかけがえのない思い出だ。だからこそ。

イトナは思う。

俺が居て、一番楽しかった五人組(この形)を、崩したくはなかった。いつまでもそんな関係が続けばいいと思った。だから、俺はこの結婚を祝うべきだ。

「新郎新婦の入場です…」
司会の声が響く。結婚行進曲に合わせて、違う入口から父親に連れられた花嫁と、花婿が入ってきた。
狭間綺羅々。彼ら五人組、通称・寺坂グループの紅一点で意外と姉御肌だった彼女は、今は見たこともないほど美しく化粧して、純白のドレスを纏い、イトナが会ったことのなかった(しかし非常に優しそうな)男性の隣に立っていた。

…白いドレス、似合うじゃないか。

イトナは思う。ウェディングドレスなんて、アイツが一番嫌いそうな衣装の一つだったのに。

いつからだったろう。狭間を気づいたら目で追うようになっていたのは。
いつからだったろう。ミス肝試し日本代表を自称する彼女を、とても綺麗だと思うようになっていたのは。
…言い出せなかった、怖かったから。関係が変わってしまうこと、どう転んでも友達には戻れなくなってしまうことが。
だから、隠し通そうとした。飲み会でもした時にぽろっと零してしまったか、何故か村松には知られていたが…。
どちらにしろ、中学生のままで居られないなら、申し込めばよかったんだろうか?そうしたら、もしかしたら…。

そこまで考えて、イトナは首を横に振る。

有り得ない。旦那さん、話には聞いていたけど良い人そうじゃないか。あの狭間が「面白い人」だと説明するくらいだから、意外と一筋縄ではいかない人かもしれないが…

神父さんの言葉が終り、誓いのキス。花嫁と、花婿の姿が重なる。歓声が上がる。

吉田と寿美鈴さんみたいに、互いに望んだ結婚は良いことだ。とても、良いことだ。

「ブーケトスですって!」
「絶対取るんだからっ!!」
華やかなドレスにハイヒールなんて格好でよくも、と思うくらいに来客の独身の女性たちがどたどた走って外に出る。
「おー、やーるねぇ」
吉田が少々顔を引き攣らせながら言う。隣で寿美鈴もくすくす笑う。
「綺羅々ちゃん、綺麗だったわねぇ」
のんびりと、そんな話をしながら綺羅々の友人五人はこのホテル自慢の薔薇がいっぱいの庭園に出る。
空はやっぱり、どこまでも青く澄み渡っていた。

花嫁のドレスと同じくらい真っ白で、ゴミ一つ落ちていない道の真ん中で、花嫁と花婿は立っていた。
「ブーケトス、行きまーす!3、2、1」
司会が調子こいた声で張り上げる。

しかし、花嫁は、綺羅々は投げなかった。彼女は気づいたのだ、参列者に紛れる旧友たちの姿に。
そして、一人の青年の、透明な眼差しに。

綺羅々は花婿から離れて、旧友たちの元に歩いていく。そして、イトナの前で立ち止まると、クラスで朝、挨拶するかのように声を掛けた。
「よう」
「…結婚、おめでとう?」
突然自分を選んでやってきた綺羅々に、何が何だかわからず、イトナはとりあえず祝辞を述べてみる。綺羅々は鼻で笑う。
「全然めでたいって顔してないね」
それから綺羅々は、手に持った小さな花束をイトナに突き出した。
「あんたにあげる」
「…は?」
イトナはますます困惑する。
何で男の俺にブーケをくれるんだ。
「欲しい人、いっぱいいるのに。投げてやれよ」
先を焦る女性たちが、思いがけない展開に目を見開いている。綺羅々は彼女たちをちらりと一瞥したが、すぐにイトナに向き直った。
「あんたみたいなネンネにこそ、こんなお花ちゃんが相応しいのよ」
「…あのな」
呆れて言い返そうとするイトナを遮って、綺羅々はさらに続ける。
「いらないなら、早く良い女(ひと)見つけてその人にあげなよ。じゃあね」
綺羅々はそれだけ言うと、花婿の元へと戻る。
参列客が全員、呆気にとられて静まり返るのに構わず、花嫁は悠々と花婿の隣に立った。

「…友達?」
流石にびっくりしたらしい花婿が、花嫁に問いかける。花嫁は頷いた。
「弟みたいなの。まあ、同級生だけど…全く、いつまで経っても世話が焼ける」
そう言ってため息を吐く花嫁の憂いを含んだ横顔にはしかし、男女の恋慕や未練などといった感情は全く見受けられなかった。
花婿は安心して、花嫁と同じ方向を向いた。

「…相っ変わらず、ひでえ皮肉屋だあの女」
披露宴の席、村松が呆れたように言う。
「…大体何があったかわかったけど、気づいてやれなくて悪かったな」
寺坂が珍しく、すまなさそうに言う。
「ま、まあ、飲んで忘れようぜ…って、お前車だったっけ」
薄々勘付いてはいた吉田が、イトナのグラスにシャンパンを注ごうとして止める。
「じゃあ食べて忘れましょ」
寿美鈴が朗らかに言う。

イトナは貰ったブーケを、とっくり眺めていた。

気づいていたのか。全く、俺たちグループの男どもは、昔っからアイツには適わないようだ。

家に帰ったら、花瓶を買おう。そうしたら、コイツを綺麗に生けて、作業机の上にでも置いて、精々真っ黒に枯れ果てるまで愛でてやろう。
いつか出来る好きな女にやる花くらい、自分で選んで買ってやる。それくらいの甲斐性はある。

イトナはグラスを吉田に差し出す。
「ジンジャーエールで良いよ」
吉田は笑って、溢れんばかりになみなみと注いでくれた。

窓から入り込む6月の陽光を受けて、ジンジャーエールはきらきらと金色に煌めいた。

「今日は良い日だ」

イトナは小さく呟いた。

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