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暗殺教室(イト狭):みかんと友愛数

綺羅々ちゃんとどうにか仲良くなりたい不器用なイトナ君のお話。ぎこちなラブ。吉原のオマケもあるよ。漫画:冷蔵庫の中に象(杉山小弥花)を少し引用。あと、二人のみかんの食べ方と、成績について勝手に捏造注意。異論は認めます…因みにここで言う媚薬とかなんとかは、恋のお呪いと同義です。言葉の意味そのものみたいな大それた意味合いはないんじゃよー。




詩と数学が目指す真は、一つの比翼の鳥である


今回の数学の模試では、やたらと公倍数、公約数についての問題が出てきた。イトナにとって数学は得意な科目だから、何が出ても殆ど困ることなどないのだが。
「友愛数っていってね」
模試の内容でそれを思い出したのか、昼休みにカルマが所属する四班の仲間たちに話していた。
「2つの自然数の組で、自分自身を除いた約数の和が、互いにもう片方と同じになるような数があるんだって。ピタゴラスの時代には発見されてたらしいよ。一番小さいのは220と284」
イトナは、コンビニのごはんのばらけやすいおにぎりをかじりながら何となく彼の話を訊いていた。しかし、次にカルマが言った言葉でより集中して耳を傾ける。
「アラビアでは二つの果物に友愛数を書いて、媚薬として好きな人にあげたんだってさ。」
「…」
イトナは手元に残った昼食を見下ろす。机の上には、安かったのでつい買ってしまった半分緑の温州みかんがちょうど二つ。育ち盛りの中三男子であるし、そのくらい難なく食べられるが、イトナはそれを再び布巾に包んだ。

全てのテストが終わり、クラスメートたちは全員帰る。二週間後に迫った期末テストに備えたり、暗殺の計画を立てたりするのだろう。
イトナは校庭に生えている大きな木の枝に器用に座って、ラジコンのヘリコプターを飛ばしていた。
音も静かで、リモコンに送られる映像も随分鮮明になった。問題は攻撃力だ。今回の糸成号も対先生弾を飛ばす銃がついているが、相変わらず威力は弱い。(実際にはやらないけど)イタチの首くらいは飛ばせるとは思うが、殺せんせーを狙うにはまだまだ甘い。期末テストが終わったら大掛かりな暗殺を仕掛けるのだと磯貝は言う。それまでに、役に立つようなものが作れるか…

イトナは軽く息をついて、ヘリコプターを回収する。もう帰ろうかと思ったその時、猫のように軽い、砂を踏む足音がした。そこには、同じ班の狭間綺羅々が一人でふらりふらりと歩いていた。
彼女は自分と同じ、俗に言われる『寺坂グループ』の一員ではあるが、二人とも寺坂、村松、吉田のように四六時中一緒にいる訳ではない。
イトナはカバンに戻したみかんの存在と、カルマの言葉を思い出した。

『アラビアでは二つの果物に友愛数を書いて、媚薬として好きな人にあげたんだってさ。』

本当かな…

普段イトナはそんな呪いなんて非科学的なものを信じる質ではないが、今日は何となく試してみたくなったのだ。
カバンからみかんを取り出して、いつも持ち歩いているドライバーを皮に軽く突き立てる。そのまま尖った先端を走らせ、片方には220、もう片方には284と刻み込んだ。皮を傷つけられたみかんは、清冽で鮮やかな、柑橘特有の香りを辺りに撒き散らした。
それから、それなりに高さのある自分の居る枝から、スクールバッグを落とした。
ドサッ。
予想より重い音を立ててスクールバッグは地面に激突する。
…確か、割れたり壊れたりするものは入ってない、筈。
しかし、それで狙い通り綺羅々はこちらに気が付いた。歩く方向を変えてイトナの居る木に近づき、枝の上を見上げた。
「あら」
「よう」
偶然を装って右手など挙げてみせる。そんなイトナに綺羅々は言った。
「またラジコン使って覗き?」
イトナは綺羅々にぶつからないように枝から飛び降りる。
「人聞きの悪いことを言うな。動作確認してただけだ」
それから、持っていたみかんの一つを綺羅々に渡す。
「それ、やるよ」
「…何よこれ」
傷つけられた故にやたらと香り立つ、温いみかんに綺羅々は眉根を寄せる。
「何って、温州みかんだ。品種なら多分青島温しゅ…」
せっかく説明してあげたのに、綺羅々は面倒臭そうに手を振ってそれを遮った。
「見りゃ解るわよそれくらい。てか何でこんなに傷ついてんの、2、8…4?何これ」
みかんを手の中で回して表面を観察しながら綺羅々は呟いた。イトナは咄嗟に考えついた嘘を言う。まさか、媚薬だなんだ言う訳にはいかない。
「えーと、数学が出来るようにする呪い、みたいな」
綺羅々は模試の出来を思い出してか、嫌そうな顔をした。
「嫌みか」

…不味いことを言ってしまったか、そういうつもりじゃなかったのに。

次に何を言おうか迷っていると、予想外なことに綺羅々はその場に腰を下ろしてみかんの皮を剥き始めた。
「それでも食うんだ」
イトナが思わず呟くと、綺羅々はイトナをちょっとだけ睨むようにして言った。
「みかんにこんなことして、傷むじゃない。もう良い年なんだから食べ物で遊ばない」
…そういう科白がさらっと出るあたり、やっぱり女なんだな。
イトナは妙なところに感心してしまう。イトナも綺羅々の隣に胡座をかいて座り、自分のみかんを剥く。外皮を剥いたら、白い筋を爪の先で摘まんで綺麗に取り除いていく。…ふと綺羅々を見ると、筋が付いたままの房を口に運んでいる。
「白いの付いたままで食べれるんだな」
「一々煩いよ。あんたこそ男の癖に何ちまちま剥いてるのよ」
…細かい作業が好きなもので。それに、栄養学的にどうのと言われても、口当たりが悪いのは俺は嫌だし。
相変わらずみかんをツルツルに掃除しながら、イトナはみかんを咀嚼する綺羅々を眺めていた。綺羅々はみかんを飲み込むと、顔をしかめた。
「酸っぱい…」
イトナも、まだ心残りはあるものの急いで房を一つ外して、口に入れてみる。
別段美味しいというわけでもないが、口内に広がるのは確かな甘味。
「こっちは甘いぞ?…替えるか」
「良いよ、あんた甘いの好きなんでしょ?」
転校初日のイトナの昼食風景を思い出してか、綺羅々は言った。
…流石に素面であんなに大量の菓子類を食べたりはしないのだが。
「いや、それ程でも…嫌いでもないが」
そう言ってイトナは問答無用で綺羅々のみかんを取り上げ、自分のみかんを代わりに渡した。

盛るのなら、それを隠す食べ物は甘い方がいい。

「んな散々触りまくったみかん人にあげるなって…」
綺羅々は文句を言いつつも食べ始めた。そして呟く、
「ホントに甘い」
イトナは黙々とみかんを食べる綺羅々の横顔をじっと見ている。
「さっきから何なのよ」
イトナの熱ーい視線に気づいて、綺羅々は迷惑そうに言った。
「いや…」
イトナは慌てて目線をみかんに戻す、振りをしてまたこっそり横目で綺羅々を観察する。
綺羅々の横顔は当然というか、相変わらず青白くどこか冷やかで、いつもと何も変わらなかった。

まあ、最初からわかってたさ。呪いは呪いだ。

イトナは少しだけ残念そうに微笑んで、綺羅々のものだったみかんの一房を口に含んだ。

「…こっちにも数字が書いてあるのね。220?」
食べ終わったらしい綺羅々が、皮に刻まれた数字に気づいて訊いてきた。
「そう」
イトナは頷いた。
「あんたは数学得意なんだから出来るようにするおまじないなんて必要ないじゃない」
綺羅々は言った。イトナは少し考えて、返す。
「俺は現代文と社会が出来るようにする呪いだ。互いの知識を分け合おうみたいな」
綺羅々は笑った。
「ガキみたいなこと考えるね。…まああんた、現代文はともかく社会苦手だもんね。工場再建して跡継ぐなら技術よりそっちの方が大事なのに」
「本当にな」
でも、覚えられないものは覚えられないんだから仕方がない。他の科目はほぼ皆に追いつけたと思うが、社会…特に政治経済が本当に解らない。今日の模試でもやっぱり政経のコーナーは白紙だらけだ。こんなことでこれからどうしよう、とは思うのに。
イトナの、いつもは鉄壁に保っている無表情に、明らかな翳りが差したのを見て、綺羅々は少し驚き、気まずそうに顔を顰め、それから考えた。
「今度の期末…一番苦手な科目で学年一番取ったら触手二本だってね」
「殺せんせーそう言ってたな」
綺羅々は言う。
「あんたに教えてあげる、政経。まあ、私も凄く得意って訳じゃないし、あんまり難しいところは磯貝とかに訊いた方がいいと思うけど」
イトナは驚いて綺羅々を見る。柄にもないことを言っている自覚があるのか、綺羅々はイトナと目線を合わせず、頬は僅かに赤みが差していた。
「…良いのか?」
思いがけなさすぎる展開を信じられず、イトナは綺羅々をじっと見つめ、確認するように訊いた。綺羅々はそのまっすぐな視線にちょっとたじろぎながらも頷いた。
「その代り、数学は私に教えなさいよ。あ、あと物理も」
「…わかった」
イトナはこくりと小さく頷いた。
「さて」
綺羅々は立ち上がった。そして、校舎を指さした。
「今日の模試の復習でもしてく?」
「記憶が新しいうちにやったほうが良いらしいからな」
イトナも立ち上がる。みかんの皮は布巾に包んでスクールバックに入れた。
「あんた専門的でマイナーなところばっかり突き詰めそうだよね」
「気を付ける」
そんな他愛ない話を、他の友達も居ない1対1でも当たり前のようにしながら、イトナと綺羅々は校舎へと戻っていく。

本当に、効いた。やった。

友愛数を刻んだみかんの皮の入っている、肩にかけたカバンを見下ろす。
イトナは心なしか笑みを浮かべて、いつもより若干軽い足取りで綺羅々の後に付いていった。

over

オマケ【予想外に流行っていた】

寿美鈴、220・284とチョコレートで書かれた二枚のクッキーを入れたセロハン袋を持っている。

綺羅々「あれ、原も(数学を出来るようにする)お呪いしてんの?」
寿美鈴「…!!!え、あ、うん…きららちゃん、誰にも言わないでっ///」
綺羅々「…?まあ、言わないけど」
イトナ(バレませんように…)
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