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暗殺教室:緊張の夏、日本の夏2

今回のドキドキは、恐怖感に起因するもの。やっぱり夏祭り。次回予定している千速はガラッと雰囲気変わりどシリアス。どおしてこうなった。
追記~:磯メグでも緊夏シリーズで一本思いついた。今書いてるだるだるな大人イト狭終わったら挑戦してみむと思ふ。


菅中(+木桃):闇

「ね、ねえやっぱり怖いよもう出ちゃおうよぉ…」
莉桜が共に来ている桃花の肩にしがみつく。
「だ、大丈夫だよ作り物だもん。早く歩こう?」
莉桜の肩をポンポンと軽く叩いて彼女を宥める桃花の声も、大分震えている。
二人は今年の夏祭りの、花火の次くらいの呼び物、お化け屋敷に来ていた。本当は各々の恋人と来たかったのだが、菅谷はバイト、木村は夏風邪でダウンで予定が合わず、女子二人での友情デートと相成ったのだ。
「今年はすげーらしいぞ」と岡島が言っていたので、興味本位で入ってみたはいいが、確かに怖い、怖すぎる。入り口に置かれたホワイトボードに『今までの犠牲者の記録:途中退場32人、気絶者6人、チビった人(自己申告)3人』などと書かれていたのも頷ける。まだゴールの魔除けのペンダントが置かれた墓場までは遠い筈だが、凍てつくみたいな風に、微かに聞こえてくるお経と断末魔、やたらヌメヌメした壁、突然飛びついてきた屈強なお化け役などのせいで、二人の心は既に折れそうだった。

…今桃花の頬を掠めてった青白い人魂は何?何で出来てるの?!

数週間前、殺せんせーが沖縄で作ったチャチな肝試しの洞窟とは比べ物にならない。
「こ、今年なんでこんなに怖いわけ?特に内装とかお化けのビジュアルとかただ事じゃないよ、絶対頭のおかしい人が作ってるよコレ」
莉桜は既に半ベソをかきながら桃花にぴったりくっつく。
「が、頑張ろう!私たち暗殺者でしょ?こんなので怖がってたら、殺せんせーなんて殺せないんだからっ!」
桃花が一生懸命莉桜を鼓舞する。
しかし、二人ともどうにも足が竦んで動けない。
数メートル先の壁に見えるのは、非常出口を現すお馴染みの緑地に白抜きの人型。あれが、この状況が全くのフィクションであることを思い出させてくれる。それと同時に、途中退場すれば楽になれると弱り切った心に甘く囁く。

…決めた。

「ちょ、ちょっと莉桜、どこ行くの」
ズンズンと勇ましいばかりの足取りで突然歩き出した莉桜を、桃花は慌てて追い掛けようとする。莉桜は歩きながら高らかに宣言する。
「あたし、出る!引き留めようって無駄よあたし決めたんだから!!」
桃花は、ふいふいっと首を振って辺りを見回した。

…後ろには、誰もいない。しかも今なんか冷たいものが首筋を触ってった気がする。ひたすら暗くて静かで、それが余計に何かあるんじゃないかと恐怖感を煽る。

…こんなところに置き去りにされてたまるもんか。

桃花も、莉桜と一緒に外に出ることにした。

ペンダントがたかがお化け屋敷の景品とは思えないくらいカッコ良いらしいからちょっと惜しいけど、そんなのは硝子細工屋さんで買えるものね。

桃花が退避への一歩を踏み出したその時。真っ黒な太い腕が、小さな目玉が蓮の実のようにびっしりついた腕が二本、背後の壁から飛び出してきて桃花を羽交い締めにし、壁の向こう側へと引き吊り込もうとした。
「きゃあああああ?!」

友人の悲鳴に、莉桜は鋭く振り返る。すると桃花が、既に身体を半分壁の向こうに引き摺り込まれながら必死になってもがいていた。
それを見た瞬間、莉桜の中で正義感が恐怖に打ち勝った。

いくらお化けでも女の子にあんなことするなんて!

莉桜はバッグの中に手を入れて武器になりそうなものを探りながら桃花に向かって走っていく。
「桃花を、離しなさい!!」
そう叫んで暗殺バドミントン用の木製ナイフを振り上げる莉桜。しかし莉桜もまた、何者かに身体を羽交い締めにされ、動きを止められる。その腕は、ヌメヌメと気持ちの悪い灰色で、所々悪くなったブルーベリージャムみたいな赤紫が滲んでいた。裂けた傷口から、どろーっと汚いものが垂れ下がり、ぼたぼたぼたっと白い何かの幼虫が数匹落ちた。それが買ったばかりのオシャレなグラディエーターサンダルから露出した、足の甲にべちょっと落ちた瞬間、再び恐怖と嫌悪が莉桜の心を支配した。
「ひっ、ぎっ、いやあああぁぁ!!!」

莉桜は渾身の悲鳴をあげ、それきり気を失った。

「…かむらっ!中村っ!…莉桜っ!!」
誰かが名前を呼ぶ。誰かがペシペシと、軽く莉桜の頬を叩く。聞いたことのある声だ。莉桜は数回瞬きをして、目を覚ました。ぼやけた視界が像を結ぶと、眼前に亜麻色の少し長めの髪をした、見慣れた少年の顔があった。心配そうな顔をしている。
「…すがや?」
莉桜が言葉を発する。それで菅谷は、安心したように表情を綻ばせた。
「よ、良かったー…彼女を殺しちまったかと…流石にやり過ぎだったか」
菅谷は髪を掻きあげながら笑った。
「…ここは?」
莉桜が目線だけ上げて菅谷に訊いた。
菅谷は答えた。
「お化け屋敷の裏だよ。従業員がお客さん脅かすタイミングを計ったり、夕飯食べたりすんの。」

…お化け屋敷?

訊きたくないほど脳裏に深く刻み込まれた単語に莉桜は、バッと身体を起こして辺りを見回す。薄明るくて狭いこの小部屋には、お化けの着ぐるみやら水を張ってこんにゃくを漬けた桶やら小道具がごちゃごちゃと散らばっていた。小さなテーブルの上には、菅谷の夕食だったと思われるポテトサラダとカリカリ梅が残された、折り詰め弁当の容器。

…徐々に倒れる前の記憶が、蘇ってくる。

あたしは、確か、ゾンビみたいのに襲われて。
桃花は、目玉だらけの黒い奴に襲われて。

桃花…

莉桜は目をかっと見開いた。
「どうし…わ、ちょ?!」
驚く菅谷に構わず、莉桜はその胸倉を掴んで揺さぶるようにする。
「何であんたがここにいるの、あのゾンビは誰なの、桃花はどうしたの?!」
矢継ぎ早に聞く莉桜から菅谷はせき込みながら慌てて離れる。
「おい、落ち着けって!順番に説明するから!」
菅谷に言われて、莉桜は仕方なく剥き出しの床に座りなおす。菅谷は莉桜が落ち着いたのを見て、最初はぽつりぽつり、次第に興が乗ってきて流暢に話し出す。
「俺、ここのバイトなんだよ。最初は道具類制作として入ってさ。今年は大人向けに、とか謳ってる割に甘いなあと思ったんで、ちょっと色々、グロ画像サイトとか参考にしたアイディアをいくつか出してみたらそれがポンポン通っちまってよ。で、店長にすっかり気に入られて、ぜひお化け役もやってみたらいいとか言われて、断り切れなくてゾンビ役やってたわけ。」

…あの気持ち悪いお化けのデザイン全部コイツだったのかとか、ビミョーに自慢げなのがイラッと来るとか。

色々言いたいことはあるが、まだまだぐっと抑えて、莉桜は先を促した。

「それで?なんであたしたちをあんな目に合わせる必要があったわけ?桃花を襲ったのってもしかして…」
「安心しろ、矢田を連れてったのは木村だ。夏風邪って言ってたろ、ありゃアイツのウソだ。こっそり一稼ぎして、矢田にアクセサリーの一つでも買ってやりたいとか言うもんだから、俺が口利いてやった。で、まあ二人して働いてたら、お前と矢田がおっかなびっくりしながら歩いてくるじゃんか。つい嬉しくなっちまって」
アハハ~と間の抜けた表情で菅谷は笑う。その笑い顔を見ているうちに、莉桜の中で溜め込んできた怒りが、ふつふつと湧き上がる。

…あたしたちが、どんだけ怖かったか、知りもしないくせに。

特に黒い腕に捕まえられて怯えきった桃花の表情を思い出すと、化学実験でうっかり突沸させた熱湯のように、怒りが燃え上がった。
運のいいことに、あのナイフはまだ自分の手の中にあった。
莉桜は思いっきり、ナイフを振り上げる。
「って、中村?!うわあああああ!!」
「バカバカ、菅谷のバカ、やっていいことと悪いことがあるよっ!!」
莉桜は菅谷の頭をポカスカとナイフで殴りつける。
「痛っ、いてててて!んな怒るなって、ちょっとした悪ふざけだろ?」
悪びれる様子がない菅谷に、莉桜は涙を浮かべながら怒鳴る。
「女子は男子に力じゃ敵わないの!それを、利用してあんなことするなんて、もう絶交だお別れだ、絶っ対に許さないっ!!」

絶交?お別れ??…絶対に、許さない???

何だかんだで大好きな彼女から三行半を突き付けられたとあっては、菅谷も焦らざるを得ない。
「わ、悪かったって!何でもするから許してくれ!!」
想像しうる限りの誠心誠意、頭を深々と下げる。
「…本当に?」
涙で濡れたおかげで却って危険な光を孕んだように見える切れ長の瞳で、じろりんと上目遣いに菅谷を見上げる。
「本当だ。男に二言はない、何でもする!!」
その言葉に、莉桜はしばらく考える。
そして、にやりと笑う。
「バイトってことは、とーぜん、お祭りの面白スポットとか知り尽くしてるわけだよね?」
莉桜は綺麗に爪を塗った白くて長い人差し指で、しなやかに菅谷を指さし、言い放つ。
「今から、あたしを案内しなさい。木村には桃花を案内させるわ。まあ、桃花が木村を許せば、だけど。あ、勿論あたし達が欲しいって言ったものはぜーんぶあんたたち持ちね。バイトで稼いでるんだから大丈夫よねそれくらい」
莉桜の要求に、菅谷は早くもたじろぐ。
「え、今から?…い、いやそれは…シフトとかあるし先輩とか煩い人もいるし」
莉桜は菅谷の喉元に、すぅっとナイフを突きつける。
「何でもするって、言ったよね?男に二言は無いとも、言ったよね?」
「…はい」
菅谷は、ひきつった笑顔でジーンズのポケットから携帯を取り出した。
「あ、もしもし店長?お疲れ様でーす。あの、もーしわけないんすがちょーっと急用が出来まして、かなり早いんですけど休憩時間を前倒しで頂けないかと…え、あ、はあ?…はい、そーです彼女です…すいません、ありがとうございます、戻ってきたらめっちゃ頑張りますんで、はい」
…話はついたようだ。莉桜もクリスタルビーズで可愛らしくデコレーションされたスマホを取り出し、友人にかける。
「もしもし桃花?大丈夫?え、ああ私は大丈夫。あのね、菅谷お化け捕獲したよ。あ、うん、なら良し。もう骨の髄まで毟り取ってやるつもりだから。だよねー」
莉桜は物騒な単語をちょくちょく飛ばしながら桃花と談笑している。電話の向こうで桃花の嬉しそうな高い笑い声が聞こえた。

…多分木村も、俺と同じ顔してるに違いない。

女の子って、怖い。

菅谷は、もう二度とこんなことはすまいと、固く心に誓うのだった。

(I got cicada, I will get you!!)
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