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暗殺教室:緊張の夏・日本の夏 part.3

Not over
まだまだ行きますよ緊夏シリーズ。今回は磯メグ。ドキドキ…というか、ハラハラ?少々の暴力描写あり。
絶対過去作品辿ればこんな感じのお話をどなたか描いていそうな作品。でも書きますヨ。
今更ですが、このシリーズで描かれる夏祭りは原作の夏祭り編とはあまり関係がありません。


母さんに借りた、白地に青紫のテッセンを散らした薄い浴衣。指に食い込む鼻緒が何となく痛い、堅い木の下駄。汗と湿気で少しベタつく、慣れないメイク。
メグは緊張した面持ちで、待ち合わせ場所の椚が丘駅の出口に居た。
何度目か解らないが、メグはまた左手首の腕時計を見た。待ち合わせ時間までは、まだ15分ある。

早く来すぎちゃった。

メグはため息をついた。

目の前の通りには、様々な色をした幾つもの夜店が立ち並んでいる。まだ日も高いので準備中の店が多いが、クレープ屋、りんごあめ屋などは既に砂糖の焼ける甘い香りを辺りに振りまいている。そうしたスイーツ類を目当てに、ピンクや青色の浴衣姿の華やかな少女たちが二人、きゃあきゃあ高い声でお喋りしながらメグのすぐ側を歩いていった。古い夏の定番ラブソングではないが、シャンプーの香りがふわっと弾けてメグを掠めていった。

可愛くて、いいな。

メグは、長い髪をなびかせる少女たちの後ろ姿を眺めながらぼんやりと思った。

一学期からずっと、自分とコンビを組んで学級委員をやっている磯貝君のことを、何となく特別視してしまうようになったのはいつからだっただろう?

「今度駅前で祭りあるんだよ」
三日前の水曜日、休み時間に岡島が言った。
「そういやそうだな。よしっ、じゃ浴衣のちゃんねー捕まえにいこーぜ!」
前原が早速、嬉々として返事する。
「全くあのゲスコンビは…」
黒板一杯に書かれたチョークの文字たちをゴシゴシと消しながら、メグは聞こえてきた会話たちに眉をひそめる。
「ハハハ…」
メグの隣で花瓶の水を窓の外に捨てていた磯貝が苦笑いした。少ししおれかけた数本のダリアの茎を丁寧に布巾で拭いてやりながら、磯貝は言った。
「でもさ、お祭りは良いよな。良かったら一緒に行かないか?」
「え…」
磯貝からの思いがけない誘いに、メグの目が大きく見開かれる。頬が、熱くなるのを嫌というほど感じた。
「あ、もしかして予定があったか?」
磯貝が訊いてくる。メグは慌てて首を横に振った。
「いや…予定は…ないけど…」
メグが口ごもりながら、下を向いて答えると、磯貝は朗らかに笑った。
「よし!じゃあ決まりだ。土曜日の六時に椚が丘駅前の南口に集合な!」
いつも通りの、みんなに向けるのとおんなじ、爽やかで優しい笑顔だった。

磯貝君は、前原君とか男の子と二人で出掛けるみたいな感じで私を誘ったんだ。デートとか彼氏彼女とか、そんな甘ったるいものはまったく意識してないで友達を誘うように。
結局E組に落ちてしまったわけだが、男の子に負けないようにと、勉強も運動も必死でやってきた。だから今更、磯貝君が自分にとってちょっとだけ特別な男の子だからって、女の子扱いされたいなんて思っちゃいけない、んだけど。

メグは着なれない、綺麗な浴衣の裾を持って眺める。
やっぱり、いつもみたいな動きやすいジーンズとかの方が良かったかな。だって、似合わないもの。思い切って着てきたけれど、ここに溢れているもっと可愛らしい浴衣姿の女の子たちには、どうやったって叶わない。
自分の背の高さや、肩幅の広さが恨めしいほど気になった。
どうして母さんは、もっと小さくて可愛くて、例えば茅野さんとかみたいに可愛らしい女の子に私を産んでくれなかったんだろう?

「嫌、困ります!!」
ぼんやりと黄昏迫る空を見上げていたメグの耳に、突如鋭い声が飛び込んできた。
ハッとして声のした方向を見ると、メグから十メートルほど離れた場所に、今しがたすれ違った覚えのあるピンクの浴衣の少女と青い浴衣の少女の二人組が、ガラの悪そうな男二人に囲まれていた。
「いいじゃねーか、お嬢ちゃんたち二人だろ?俺たちも二人だ。」
「ちょーどいいからダブルデートしよーぜって言ってんの。お茶だけでいいからさあ」
…な、なんてテンプレートな。
メグは呆れながらもそっと彼らに近づいていく。
青い浴衣の少女なんか、明らかに怯えきった表情で周りに助けを求めるように辺りを見回しているが、周りは見ない振りだ。
「嫌です!!やめてください!!」
ちょっと気の強そうな、ピンクの方が大げさなくらい大きな声を張り上げる。これも恐らく、周りにいくらでもいる人たちの誰かが助けに来てはくれないだろうかと期待してのことだろう。しかし兎角自分のことしか可愛くない現代人たち、厄介ごとには首を突っ込まないに限ると言ったわざとらしいくらいの無表情でするりするりと少女たちから視線をそらして歩いていく。
少女の甲高い大声は却って男たちを刺激してしまったらしく、腰パンに派手な金髪を逆立てた痩せた男が舌打ちをして乱暴に少女の浴衣の袂に手を掛ける。少女の顔が、今にも泣きそうにくしゃりと歪んだ。
「痴漢みてーに人のこと言うんじゃねえよ!ホントに酷い目に遭いたいかこのクソア…痛ててててて!!」
「止めてって、言ってるでしょ」
メグは意識してどすの利いた低い声で言いながら、男の手首を掴んでねじり上げた。
「何だてめえ?」
もう一人の、黒い髪をだらしなく肩まで伸ばした肥った男が巻き舌気味に訊いてくる。
「その子たちを離しなさい。困ってるじゃない」
凛とした表情を崩さず、男たちを睨みつけるメグ。
「離しやがれこのデカ女!」
金髪の男は乱暴にメグの手を振りほどいた。そして顎を突き出して、メグを不躾なくらいじろじろと頭の天辺からつま先まで舐め回すように眺め回す。
「…何ですか?」
視界の端で身を寄せ合って縮こまっている少女二人に目くばせと手振りで逃げるようにと合図しながら、男の無遠慮な視線を受け止める。男のネズミみたいに小さな卑しい目が、小馬鹿にしたように細められた。男は言った。
「お呼びじゃねえんだよドブスが」
低能な罵詈雑言だが、女性なら言われて傷つかないものはいない言葉だ。ちくりと、心のどこかに針を刺されたように感じた。しかしメグは、気丈に男の目を見据えた。
「私がブスか美人かは関係ないでしょ。問題なのは嫌がる女の子たちを無理やり連れ去ろうとしたことです。警察呼ばれても文句言えないですよね?」
そしてやや挑発的に鞄からスマホを取り出した。何故か、ヒロイックに無謀なことをしたい気分だった。
「てめえ女の分際で!」
メグのスマホに恐れをなした肥った男の方が「よせ!」などと止めようとするのに構わず、金髪の男はメグに殴り掛かってきた。メグは男の拳を交わし、逆に伸ばしてきたその腕を両腕を使って抱え込み、投げ飛ばしてしまった。男は背中から、アスファルトに叩きつけられた。見ざる聞かざるを決め込んでいたギャラリーたちからも、思わずの歓声が上がった。

…烏間先生に習った通りできた。やった。

しかし、勝利を確信して油断したのが不味かった、地面に倒された男はなんと、メグの右足首を思いっきり引っ掴んでそのまま引きずり倒したのだ。動きづらい浴衣姿だったことも仇となり、メグは派手に尻餅をついた。
男は間髪入れずに起き上がり、メグにのしかかって首を絞めてきた。
「か…っ、あ」
メグはもがき、男の指を引きはがそうとしたが、男は全体重をメグの細い首に掛けていた。酒臭い息が掛かる。酸素不足になった頭が、ぼうっとする。男は下卑た嗤いを浮かべた。
「結局女なんてのはなぁ、俺たち男にゃ敵わねえんだよ。ほらほら苦しそうだな、反省するか?反省するなら止めてやるよ、お詫びとして近くのホテルで相手してもらうがな。お前みたいなドブスでも使える部分はあんだろう」
「…っ」
屈辱的な言葉に、仕打ちに、メグは酸欠で意識が途切れそうになりながらも、それでも目を見開いて男を睨み据えた。
その時。
「やめろ」
低い少年の声とともに、男がメグから引き剥がされた。
黒髪で痩身の、青と灰のやたら縞模様の浴衣に身を包んだ少年が、鋭いまなざしで男をはったと睨み付けていた。
「磯貝君!!」
首を押えて咳き込みながらも、メグはその名を呼ぶ。
「ちっ、こんなデカブツにも男がいんのかよ」
男は舌打ちする。しかし磯貝が自分より年も下で華奢な少年だとわかるや否や、酔っ払って理性の利かなくなった拳を今度は彼に向けた。
「お巡りさんこっちですっ!」
「君たち何してるんだ!!」
声がして、通りがかりのTシャツを着た青年に伴われた、お馴染みのかっちりした青い制服を着込んだ警察官が走ってきた。
「逃げるぞ!!」
肥った男が、警察官の姿を見てすらまだ暴れ足りないらしい金髪男を慌てて取り押さえながら引き摺って行った。

事情聴取が終って、メグと磯貝と、助けた少女たち二人が交番を出た時には辺りはすっかり暗くなっていた。まだ祭りがやっていて、花火も時々打ちあがっていたのが唯一の救いだった。
「ホントに、ありがとうございます」
少女たちは、まるで双子のようにシンクロナイズドされた動きでメグと磯貝に深々とお辞儀した。
「気にしなくていいよ、でも次から気をつけるんだよ。」
磯貝はいつもの優しく爽やかな笑顔で少女たちの頭を撫でた。少女たちは頬をほんのり赤く染めた。
「きゃー撫でられちゃったぁ」
「でもあんなビジンなカノジョいるじゃん」
あんな事件に巻き込まれて、警察のお世話にまでなった直後だというのに、何とも呑気な会話をしながら少女たちが縁日の人混みの中に消えていくのを眺めていたメグは、突如磯貝に強く手を引かれた。
磯貝は険しい表情で唇を真一文字に引き結んで、何も言わずにずんずん歩いていく。
「…磯貝くん、ごめん」
沈黙に耐え切れず、小さく謝るメグ。磯貝は彼らしからぬぶっきらぼうな口調で言う。
「何が?」
「…だって、怒ってるでしょう?自分じゃ敵わない相手なのに喧嘩して、揚句磯貝君に助けられて」
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