スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

暗殺教室(寺坂グループ):中三男子は腹が減る!

愛すべきアフォ男子共の繰り広げる、青春バカ話。



「昼前のオヤツにピザ頼んで食おーぜ」
一時間目が終わった休み時間、いつもの五人で集まって駄弁っていた時、寺坂が言った。
「…いきなり何を言い出すかと思えば…」
「放課後に毎日タダラーメン食っててもまだ足りねえのかよ…」
「ただでさえ無駄にデカいのに、横にまで広がったら一体どうなるのか…」
「このっ、ピザ野郎!」
仲間たちから口々に呆れ果てたというような反応が返ってくる。
「誰がピザ野郎だ!…何だよ面白いと思ったのに。あのタコの目を盗んでどれだけのことがやれるか、暗殺訓練にもなると思うぜ?」
寺坂が諦めきれないように言う。
暗殺訓練、はこのクラスにおいては魔法のワードだ。その言葉をきっかけに仲間たちの目が明らかに変化した。
「そうだな…殺せんせーの弱点や気づかれにくい部分の再確認にもなるか…」
「原じゃねーけど、毎日あんなハードな訓練してると腹減るんだよなー、確かに」
「ピ○ーラのハワイアンクオーターなら頼んでも良い」
寺坂に呆れた反応を返しながら、実のところは恐らく、教師の目を盗んで些細な悪戯をする、という計画が彼らの厨二心をくすぐったのだろう。基本的に小規模な悪事をするのが大好きな奴らである。しかも成功すれば小腹を満たせる美味しいご褒美まで手に入るのだ。
「くっだらない、私パスね」
狭間が野郎どもに背を向けて、分厚い文庫本を開いて読みだした。
「なんでぇ付き合いの悪い」
寺坂が言うのに対して、村松がやや庇うように言った。
「小食だからな。」
「で、どうすんだよ。今から電話する?ていうか、学校に届けてくれっつって来るもんなの?」
吉田が訊いた。
「どちらにしろ今日はやめた方がいい。まずは計画を立ててからにしよう」
イトナが冷静に言った。
「だな」
四人の意見はそれで纏まった。

「じゃあまず、決行時間だ。暗殺訓練にならないと意味がねえし、オヤツにちょうどいい三時間め前の休み時間に食えるように、二時間目の途中の十時に届けてもらう、で良いか?」
寺坂が言う。
「ちょい待ち、明日の二時間目、訓練じゃねえよな」
吉田がスマホを取り出して授業予定表を確認する。
「…数学。おあつらえ向きだ。」
「よし」
寺坂が満足げに頷いた。
「で、届けてもらう場所は、どこにするべ」
「この山道…バイクで登んのはしんどいだろ…」
村松が窓の外を見やる。
「無理だな、山道っつーか獣道だもん」
「山の入口はどうだ?」
イトナが提案する。
「本校舎の校門前ということになるが」
「そりゃマズいだろーがよ」
村松が言った。
「だってあの理事長が随時見張ってんだぜ?モニターで。あのオッサン他にやることねえのかよ」
「反対側の入口は?確か、山の周りぐるーっと回ってくと駄菓子屋があったはず」
吉田がポンと手を打った。学校周りの地理にはまだ疎いイトナ以外の三人は、おお~、と頷いた。寺坂が言う、
「っしゃ。じゃあ、それを目印にして…」
しかし全部は言わず、途中で言葉を切って考え込んだ。
「あの山道一キロを往復…一体何分掛かるんだ」
他の三人も、うーんと唸って首をひねる。
「上り下りだしなあ。ただ行って来いするだけでも八分ちょいってとこか…」
「『ウ○コ』で通すにはちと長いな…」
「あのタコ、絶対トイレまで様子見にいくぜ」
「それを何とか食い止めるのが実行犯以外の仕事だろ」
「そうは言ってもよ…あ」
村松が、何かを思いついてイトナに訊いた。
「おい元改造人間、お前昨日の100メートルの結果どのくらいだっつってたっけ?」
イトナはちょっと顔を顰めたが、答えた。
「その呼び方止めろ。…確か、9秒18だった」
「…すっげ」
「ウサイン・ボルトより速えじゃん」
フツーの人間ではほぼ有り得ない記録に、感嘆する面々。しかしイトナは首を横に振る。
「…でも日に日に遅くなっている。何とかある程度のところで食い止めようと訓練しているんだが…」
「…充分じゃね?」
「とにかく今はそのくらいで走れるってことが重要だ。100メートル9秒ってことは単純計算で180秒。山道だってこと、疲労、ピザ受け取るのに必要な時間、そんなものを加味しても…五分は掛からないな」
吉田が計算しながら言った。村松が笑う。
「ションベンでも通用するな」
「おめー、何リットル出してんだよ。…まあそれは置いておいて、それじゃ実行犯はイトナで良いな?」
「さんせーい」
全員が賛同し、話が纏まったかに見えた。しかし、今度は実行役にされてしまったイトナが疑問点を上げる。
「でも十時きっかりにピザ屋が到着するとも思えないが。来てから俺が行くことになると思うが、来たかどうかはだれがどうやって調べるんだ?」
「おいおいおい、他でもないお前さんがそれ訊くのかよ」
イトナの問いに対して、吉田が大仰に呆れたという表情をする。
「何のために毎日ちまちまコツコツ、糸成号を組み立ててんだよ」
「…まさか」
寺坂がその『まさか』を答えた。
「お前が授業中にこっそり偵察ヘリ操作して、調べればいいじゃねーかよ。」
イトナは三人をちょっと睨むようにして見る。
「…最近お前ら、俺に頼り過ぎじゃないか?」
「命救ってやっただろー?細けーことは気にすんな!」
寺坂がイトナの背中を叩いた。
「…いざとなった時に全責任俺に押し付けて逃げるなんて真似したら、タコの忠告なんて関係ない、元改造人間の力駆使して殴り飛ばすからな」
そして、いくつかの不安要素は残しつつも、今度こそ計画は成立したのだった。

次の日、一時間目の休み時間。殺せんせーが次の授業の準備をしに教室を出ていったのを見計らって、寺坂組男子たちは集まった。
「意外と遠かったぞ、駄菓子屋」
イトナが言って、他の三人に画像が見えるようにコントローラを操作して見せた。液晶には、駄菓子屋とその周辺の民家が数軒、上空から見下ろしたような景色が映っていた。
「相変わらずすげえな」
村松が言う。
「後でどう作ったのか教えてくんねえ?」
吉田も訊いてくる。イトナは、いつも見開いた無表情の瞳にほんの少しだけ得意げな色を覗かせた。
「よし。じゃあ、注文すっか。今から電話すりゃ、十時には届くよな。」
寺坂が言う。吉田がスマホを取り出して、ピザ屋に掛ける。
「あ、もしもし、ピザの宅配頼んまーす。時間は十時、場所は椚が丘中学校裏手の『夕日屋』前で…種類?えーと、ハワイアンクオーターだっけ?はい、はーい、よろしく」
吉田が通話を切る。そして、驚いたように呟いた。
「ホントに注文受けたよ…」
「向こうも商売だしな。松来軒(ウチ)はやらねーと思うけど」
「後は取りに行くだけだな。イトナ、頼んだぜ」
肩を叩いてくる寺坂に、少々複雑な表情を浮かべながらもイトナはこくりと頷いた。

始業のチャイムが鳴る。引き戸が開いて、殺せんせーが戻ってきた。

四人の、史上最高にろくでもなくてわくわくする戦いが始まった。

「微分というものは実は日常生活にありふれていまして、例えば皆さんの身長や体重など変化するものの単位時間当たりの変化率など…」
殺せんせーが黒板にチョークで数式などを書くために生徒たちに背を向けるその時々を見計らって、イトナは身をかがめて机の下でリモコンを操作して映像を見る。
九時五十分。夕日屋の周りにはまだ、人影はない。
前の席で吉田と村松が何かを渡し合いながらごにょごにょ喋っている。村松が振り向いて、寺坂に小さなスプレー缶と思しきものを手渡した。
あんな目立つことして、バレたらどうするんだ。
イトナが思っていたら、今度は寺坂が、右からそのスプレー缶と、小さなメモ書きを渡してきた。
『消臭剤。ピザにかけろ』
ああ、とイトナは合点した。
殺せんせーは鼻が利く。匂いでバレるのを防ぐためだろう。
でも、こんなものをたとえ外箱からでもたっぷりかけたピザを食うのは嫌だな、とぼんやりリモコンを覗いていたら、教壇からチョークが飛んできた。…寺坂に。
「こら寺坂君、授業はまじめに訊いて下さい!」
大柄な身体を硬直させて冷や汗を垂らす寺坂に対し、イトナは安堵の息を吐く。
良かった、ばれてない。
その時。リモコンの液晶から見える景色に変化があった。画面の端から赤と白で彩られたバイクがすーっと走ってきて、駄菓子屋の前で停まった。ピザ屋だ。
イトナは偵察ヘリを急いで山道の入口の木の陰に着地させ、リモコンを机の奥深くに滑り込ませて大仰に身を屈めた。
「ど、どうしましたイトナ君!」
直ぐに気付いた殺せんせーが、マッハ20でイトナの席にやってきた。
「腹が痛い」
イトナは呟いた。

「そう言やぁ、あのタコはトイレに行かせてくれるだろうよ」
それが寺坂の策だった。イトナも同じように思ったから、その通りに言ったのだ、が。

「なんですって、それは大変!!触手細胞の副作用かもしれない、すぐ医務室へ行きましょう!!皆さんちょっと自習しててください!」
なんと殺せんせーは、文字通り顔色を真っ青にして過剰なくらい心配しだした。しかも触手でイトナの手を取って甲斐甲斐しく席から立たせようなどとするもんだから、三人は慌てふためいた。
「あっ!あー…イトナ、おめー、松来軒の賞味期限切れチャーシューあんなに食うから。殺せんせー、食あたりだと思うから、ほっとけよ」
寺坂がちょっと哀れになるくらいに冷や汗たらたらでたどたどしく嘘を吐いた。
「おい!なんつーこと言うんだ、いくら俺んちがマズいっつっても客にそんなもの出さねーよ!!」
寺坂の言葉を聞いて村松が額に青筋立てて怒鳴る。それはそうだろう。ただでさえ売れないラーメン屋が、「あの店は賞味期限切れの食べ物を出すらしい」などと噂になったらどんなことになるか。
吉田がそんな村松を必死で止める。
「ウソも方便って言うだろ…」
しかし、そんな吉田のスマホが派手な音を立てて鳴りだした。おそらくピザ屋だ。吉田は慌ててスマホを切る。殺せんせーは吉田に「携帯は切って置きましょうね」と一言注意しただけでまたイトナに向き直った。
「でも正確な原因はわかりませんし…せめてトイレ前まで送ります」
タコおおおおぉぉぉぉぉぉ!マジかあああああぁぁああああ!!
考えていた以上にずっと心配性でお節介だった殺せんせーに、三人は驚愕する。
しまった、早くも万事休すだ。
頭を抱える三人に対して、救いの手が差し伸べられた。男共の目論見にもイトナの仮病にも気づいている狭間が、淡々と黒板に書かれた内容をノートに取りながら言った。
「私らくらいの年の子が、特に下してるとかそんな関係のことでそこまで過剰反応されるって、相当うざったくて恥ずかしいと思うわよ。大丈夫だって言ってんだからほっといたら?」
「にゅやッ…そうなんですか?」
殺せんせーが訊く。狭間はさらに続けた。
「生徒に嫌われたいってんなら止めないけどねー」
その言葉がかなり利いたらしく、殺せんせーはしゅんとなって、とぼとぼと教壇に戻った。
「何かあったら、先生の携帯に掛けるんですよ」
ようやく解放されたイトナは、おなかを押える演技をしながら、教室を飛び出していった。その時寺坂の机にさりげなく、小さな紙切れを丸めたものを落としていった。
「狭間、恩に着る!!」
自分に対して拝むように手を合わせる男共三人に、狭間はクールに返した。
「…次はない。」
寺坂が机の上に置かれた紙切れを開いてみると、そこにはこう書かれていた。
『くだらないことさせてくれたな。ピザ代はお前ら三人で持つくらいしてくれないと割に合わないぞ』
あの野郎、どさくさに紛れて。
寺坂は苦い顔をする。
でも、仕方ないか。負担度を考えれば、それくらいの優遇は妥当かもしれない。
とにかく、早いとこイトナが戻ってくるのを待つしかねえ。
寺坂は前を向き、再び始まった殺せんせーの話をノートに書き取り始めた。

全く、こんなバカな計画に乗るんじゃなかった。
イトナは深いため息を吐きながら、人間離れした速度で山道を下っていた。誰かに見られたら、天狗か新種の生物かと思われるかもしれない。それでも構わず、今の自分に出せる全速力を出して、一分ほどで山のふもとにたどり着くと、そこは…見知らぬ住宅街だった。生い茂る木の根元に視線を落としてみるが、オレンジ色のヘリは当然ながらどこにもなかった。
「…あれ?」
イトナは小さく首を傾げた。

「あいつ、そろそろ着いた頃かな…」
吉田が半分独り言のように村松に言った。村松は、チャーシュー云々のことでまだぶつぶつ言っていた。吉田は返事をもらうのを諦めて、黒板の方を向いた。

確か…この方向に行けば駄菓子屋に出られると思ったんだが。
イトナは考える。そうこうしている内に時間はどんどこ過ぎていく。ピザ屋が到着してから大分時間が経ってしまった。最悪悪戯だと思われて、帰ってしまうかもしれない。
イトナはスマホを取り出し、メールを打つ。
『歯医者とケーキ屋が並んでる所に出たんだが、ここからどっち回りに行けば駄菓子屋に着く?』
送信ボタンを押して、五秒、十秒、二十秒。返事はない。そして気づいた、
そう言えば、あいつ電源を切っていたな。
やっとそれを思い出した自分と、マナーモードにしなかった吉田に腹を立て、イトナはスマホを乱暴に制服のポケットにしまう。せめてコントローラーを持ってくれば糸成号で場所が解ったかもしれないのに。
一番手っ取り早いのは、あのケーキ屋で物憂げに店番をしているなかなか良いプロポーションをしたお姉さんに道を訊くことだろうが…非常に悪いことをしている真っ最中なので、あまり目立つことはしたくない。
イトナは振り返り、今自分が下りてきたばかりの山道を見上げる。
面倒だが、街の景色が見えるくらいの高さまで戻るしかない。

「おせえな、イトナ」
寺坂が教室の前の壁に掛けてある時計を見ながら呟いた。
もう五分は経っている。何かあったんだろうか。
殺せんせーが、黒板に公式を書く触手を止めて、心配そうに呟いた。
「イトナ君は、大丈夫ですかねえ…」
それをきっかけに、ほんの少し、教室内がさわさわしだした。
「便所で頑張ってんなら、そのくらい掛かるだろ…」
村松が言う。
「そうですかね~…」
殺せんせーは完全には納得していないという顔(多分)で、続きを書き始めた。
吉田がその隙を見計らって、スマホを隠しながら電源をつける。液晶がのんびりと機種のロゴを映し出したりウイルススキャンを始めるのももどかしく、メールボックスを開いてみると…三分前にイトナからメールが来ていた。それを読んだ吉田は真っ青になった。
慌てて「右に行け」とだけ打って送信したが、どうだろう?もう遅いかもしれない。
吉田が顔を上げると、そこにはいつの間にやら殺せんせーが立っていた。
「イトナ君ですかっ?!!」
びっくりして椅子ごと後ずさる吉田に構わず、殺せんせーは携帯を取り上げた。

吉田からのみならず、村松、寺坂の顔からさぁーっと血の気が引いた。

山の中腹くらい、良く目立つ高い一本松に登ろうと、一番低い枝に手を掛けたイトナだったが、ポケットの中のスマホがぴろりんと軽やかな音を立てたので、急いで取り出して開いてみる。
吉田:『右に行け』
…遅いんだよ。
舌打ちをしながらもイトナはスマホをしまい、登ってきた道を急いで駆け降りた。
なんでピザごとき食べるのにこんな要らない苦労をしなければならないんだ。

「あーっ、窓からでっかいスズメバチ!!」
村松が叫んだ。殺せんせーがそれに気を取られた瞬間、吉田がスマホを奪い返し、イトナとのやり取りのデータを消した。
「スズメバチなんかいないわよ?」
片岡が怪訝な顔をして言う。
「ねえ」、と互いに顔を見合わせる窓際席の女生徒たち。
「いっ、今入って出てったんだよ!!」
寺坂が頑として言い張る。
「…」
教室内に、奇妙な空気が流れ始めた。
何か、変だぞ。
殺せんせーも同じことを思ったらしく、再びもぎ取る様にして吉田からスマホを奪い取り、開く。そこには年頃の男子にとっては思いっきり恥ずかしいであろう待ち受け画面が映し出されていた。殺せんせーの表情が緩んでピンクになった。
「青春ですねえ」
それは、弁当のおにぎりを幸せそうに頬張る原を、こっそり隠し撮りした写真だった。
本来なら、いや今も紛れもなく、死にそうなくらい恥ずかしい状況であるが野望(ピザ)のためだ、この際そんなことは言っていられない。これで殺せんせーがいつもの小説用ネタメモを取り出して書き留めるなどして、今のことを忘れてくれたら「原、恩に着る!」なのだが…
しかし殺せんせーは、それはそれこれはこれ、と言った様子で顔色をいつもの黄色に戻し、吉田を問い詰めた。
「右に行けって、何ですか?」
「…」
三人の背中を、蝦蟇のように、たらーりたらーりと冷や汗が流れ落ちた。

駄菓子屋が見えてきた、と安堵するのも束の間、ピザ屋のお兄さんがバイクに跨ってどうやらエンジンをかけ始めたのを遠目で見て、イトナは人目も憚らずラストスパートを掛ける。
人類に有るまじきスピードで走ってきた学生服の少年にびっくりしながらも、お兄さんは笑顔でバイクから降りた。
「もう来ないと思ってましたよー。」
イトナは小さく謝ってから、三人からカンパした野口三枚と引き換えに、ピザの入った平たい箱と小銭数枚の釣銭を受け取った。ピザ屋のバイクが発進するが早いか、イトナはヘリコプターも回収して、大急ぎで山道を駆け上り始めた。
流石に息が切れてきた。給料貰ってもいいくらいだ。

イトナが学校の裏手、雑多な灌木が生い茂る場所から抜けた時。
「!」
目の前に、顔色を真っ赤にした殺せんせーがしゅたんっと降り立った。長く伸ばした触手の先に何かぶら下げている。寺坂、村松、吉田の三人が、触手に巻き付かれて目を回していた。殺せんせーは言った。
「随分元気そうに動きますね、お腹が痛いはずのイトナ君」
「…」
「さあ、何をしていたんですか、君の口から白状してください。しらばっくれても無駄ですよ、この三人はもう話してくれましたからね」
しらばっくれるも何も、ピザの箱なんか持っている時点で言い逃れなんてできないだろう。
「…すいません」
イトナは深く息を吐いて、神妙に頭を下げた。殺せんせーは三人を地面に下ろして開放する代わりに、イトナからピザを取り上げた。紙製の外箱ごとバリバリとピザを食べながら、殺せんせーは怒った。
「青春を謳歌するのは結構ですが、学業をおろそかにしてはいけません!!ピザは没収、罰として君たち四人、宿題を3倍にします!!」
「…全く、バカね」
教室の窓からその様子を眺めていた狭間が、呆れたようにため息をついた。

放課後、松来軒のカウンター席にて。
「やっぱりよぉ、マズくたって何だって、安くて速くて確実に食えるここのラーメンが一番だよなぁ」
寺坂が数学のドリルと格闘しながら言った。まあ、ピザには何の罪もないのだが。
村松は厨房で麺の湯を切っている。
「マズいは余計だ。…事実だけど」
「いいから大人しく勉強しなさいよ、クラス三大バカと元不登校児は」
狭間が烏龍茶を啜りながら言った。
横では吉田とイトナが数学の、自分の得意なジャンルを教え合っている。
寺坂は出された醤油ラーメンのスープをすすり、顔を顰めた。苦くてしょっぱい、青春の味がした。
「うあーマズい、もう一杯!」

over
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。