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暗殺教室(村狭←イト):赤い花の満開の下

戸川純の楽曲(一部変更)に乗せて。村狭の結婚式場から去るイトナ君の心情(『花の名を知らない』で似たようなもの描いていたけど、恋敵が親友ってだけでまたちょいと変わると思うですよ)


久しぶりに、真っ白い雲を見た。空を見ること自体、久しぶりだった。

ごーん、ごーん。二人の門出を祝福する、重厚な鐘の音が響き渡る。
堀部イトナは、遠くその音を背にしながら、昔のことを思い出していた。



親にも捨てられ、仮初の保護者にも裏切られ、世界でたった一人ぼっちだった俺を、あいつらは『友達』だと言ってくれた。一緒に遊んで、一緒に悪いことして、一緒に戦って、まあ少しくらいは勉強もして。目まぐるしくも色鮮やかな、楽しい日々。
結局、殺せんせー暗殺は成功し、地球は滅びなかった。俺たち全員が高校に進学し、俺の元にも両親が戻ってきた。俺たちを取り巻く環境は、少しずつ変わっていったけれど、それでもあいつらとは変わらず友達のままだった。
…その内の一人だけ、いつしか友達とは見れなくなってしまった人がいた。狭間綺羅々。俺たちグループの紅一点。見てくれだけで言えば、俺の好みではなかったかもしれない。でも、あの人は、とても大人で、とても度胸が据わっていて、それでいて少し不安定で、内面からの魅力のある人だった。気が付いたら目で追うようになっていて、…その人のことばかり考えるようにもなっていた。

かつて独りだったように 別れてまた独りになった
日差しが眩しいほど午後の空 独りになったと実感が湧く

「綺羅々…狭間と、結婚することになった」
ある時、村松がそう告げた。目の前が、一瞬真っ暗になった。鈍器のようなもので頭を殴られて、奈落の底に突き落とされた、そんな気分になった。でも、いつかそんな時が来るような気がしていた。俺は色んな感情を隠して、いつもの通りの無表情(に見えたかどうかは定かではないが)を取り繕って祝福する。
「良かったじゃないか。おめでとう」
「…」
村松は元々小物悪役みたいな面をさらに情けなく歪め、今にも泣きそうな顔で俯いていた。
「…どうした?」
訊いてやると、村松は土下座でもしそうな勢いで頭を下げた。
「すまねえ!すまねえイトナ、俺は、お前の気持ちに気づいてた!!気づいた上で、俺は、俺は…」
「やめてくれ」
俺は言う。
「狭間が選んだのは紛れもなく、村松、お前だろう?お前がそんな迷っている様子でどうする。」
 静かに諌めてやると、村松は顔を上げた。俺は、大して背伸びしなくても同じ目線で物を見られるようになった村松と、視線を合わせる。
「俺は、お前らみんなとずっと友達で居ることを望んだ。お前は、狭間と恋仲になる道を選んだ。…それだけのことだ。」
そう言うと、やっぱり申し訳なさそうだったが、村松は笑った。友人の笑顔に安堵して、笑い返してやりながら、俺は自分をバカだと思った。

本当にやさしい人たちだ 離れても大切なままだろう
青い空雨上がりの空 俺はそれでも 生きていく

白いドレス、白いタキシード、二人の前に伸びるは白い道。穢れ一つない、二人の幸せな未来を表していた。
…あの二人を見ていれば見ているほど、俺がどれほどあの人のことを愛していたか、まざまざと知らしめられて、辛くなるのだ。
親友たちの幸せを本心から喜べない、そんな酷い人間が、そのままあいつらの傍にいられる訳もないのに。
だから、今しばらくは、独りに戻る。大丈夫、無力な中坊のままの俺じゃない。

幸せになれ、村松拓哉。
幸せになれ、村松綺羅々。

イトナがふわふわと落ちてくる細かい花びらに気づいて、見上げると、薄赤い花が木の上に咲き誇っていた。これは、合歓の木。花言葉は、確か『歓喜』。

ここ最近で初めて、彼の口元に微笑みが浮かんだ。

そうか、喜んでいるのか。色んな門出を。祝福して、くれるのか。

イトナは、硬い砂利の道を踏みしめて、また新たな一歩を歩き出す。

またいい日が来ると 樹々の花が
あれは赤い花 赤い花 孤独じゃない
親もいるし 仕事もあるし 全て失ったとしても きっと何かは残るだろう



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